授乳中は脂ものを避けるべき?
授乳中に肉や油モノを食べると乳腺炎になると思ってる人がいます。
食事に含まれる油脂で血液がドロドロになり、乳腺が詰まる、、という話を信じている人は専門家の中にもいて、授乳中は脂ものや乳製品を避けるよう指導していることもあるようです。
でも、これは間違い。
乳腺炎は赤ちゃんの吸い方や授乳姿勢の悪さ、授乳頻度の少なさが主な原因であり、食事の脂は関係ありません。
だから乳腺炎を恐れてご飯と味噌汁だけにするとか、極端な粗食にするとか、全くナンセンス。
もちろん母子ともに栄養不足を引き起こします。
ある産婦人科医の記事を引用します。
脂っこいものや乳製品を食べると乳腺炎になると思っている医療者が予想通り少なくないようですが、脂肪を摂取することが乳腺炎を引き起こすわけではありません。乳汁の産生と流出のバランスです。乳腺炎の誘因は、乳頭の損傷、授乳回数が少ないこと、不適切な乳頭への吸着や吸う力が弱いこと、母親または赤ちゃんの病気、急な断乳、乳房の圧迫、親のストレスや疲労などで、特定の食事内容が乳腺炎のリスク因子となる科学的根拠はありません。
乳管の直径は脂肪球の1000倍
そもそも乳管(母乳が通る管)の直径は、母乳中の脂肪球よりはるかに大きいんです。
また、乳脂肪は細胞膜とリン脂質の膜につつまれた「脂肪球」として存在し、ドロドロの脂が乳管を流れているわけではありません。
脂肪球は直径0.1~15μm程度の大きさですが、これに対して母乳の通り道である乳管の内径は1000μm程度と、脂肪球の約1000倍の太さがあります。
たとえば脂肪球を直径1cmの球だとしたら、乳管の太さはだいたい10メートルくらい。
しかもベタベタしてるわけじゃないですから、簡単に詰まるわけない。
ちなみに血管中を流れる脂も『リポタンパク』の形態をとり、水に溶けるようになっているため、ドロドロして血管が詰まったりしません。
基本的に、食事に含まれる脂肪成分で乳腺が詰まる心配はないと思います。
乳腺炎は炎症ですから、脂よりも精製糖質の過剰摂取で起こりやすくなるかもしれません。
糖質過剰は一般に、炎症を促進しますから。
授乳中こそ栄養の充実
ともあれ、授乳中は栄養要求量が大きい時期です。
お母さんが栄養あるものをしっかり食べないと。
ちなみに母乳に含まれる栄養成分は、お母さんの食事内容で大きく変わります。
栄養豊富な母乳とそうでない母乳では含まれるたんぱく質の量が2倍程度、脂質の量が5倍~6倍も差あるというデータも。
また、僕が鍼灸学生時代お世話になった先生は大学で母乳の研究をしていたそうなんですが『母乳には、ほぼ食べたものがそのまま検出される』と言っていました。
お母さんが授乳中に肉などをしっかり食べないと、母乳が栄養不足になると思って間違いないありません。
これはおそらく乳児の発育のほか、夜泣きなどとも関係していると思う。
栄養充実系で育児をしていると、夜泣きが少なくなるようなんです。(うちの子もめったにしませんでした)
『栄養充実主義』は、特に成長期と回復期に大きな意味を持ちます。
それは母乳の栄養を充実させると同時に、産後のお母さんの回復も促してくれるでしょう。
出産と育児によるお母さんの体力消耗は半端なですから、産後うつなどを防ぐためにも、肉や魚、卵、チーズ、バターなどから十分なタンパク質・脂質を摂取してほしいですね。