タンパク質過剰でガン?
患者さんで、タンパク質が多いとガンになるんじゃないか?と心配している人がときどきいます。
その方がもし慢性的なタンパク不足で体力が低下しているような状態だったら、あまり気にせず積極的に摂ることを勧めています。
このような心配をしている人はけっこういて、肉や卵を勧めるとガンの話がよく出てくるんです。
確かに過剰なタンパク質がガンの成長を促進するという研究がされているようです。
でも身体の仕組みから考えても、明らかなタンパク不足状態にある人にとっては、まず不足を補うことが重要だと考えて間違いないでしょう。
ガンの原因
ガンの原因は大まかに、
発ガン要因
育ガン要因
この2つに分けられます。
ガンが発生することと、ガン細胞が健康上問題を起こすほどに増殖することとは原因やプロセスが異なっています。
発ガン要因になる活性酸素
はじめに癌が生まれる、発ガン要因としては、活性酸素が主なものです。
例えば放射性物質やダイオキシンなどの発がん物質は活性酸素を発生させることでDNAを傷つけ、細胞をガン化させると言われています。
活性酸素は体内の正常な生理活動の中でも常に発生していますから、身体は常に発ガンリスクにさらされています。
実際に、ごく小さいガン細胞は日常的に生まれては消え、を繰り返しているようです。
でも実は、体内でガン細胞が生れたただけでは、特に問題を生じません。
問題になるのはガン化した異常細胞が増殖し、他の組織を浸潤していくような場合。
ガンは大きくなることではじめて、命に関わる恐ろしい病になってくるんです。
だから、成長する前に免疫細胞によって消去されたり、ごく小さいままでいてくれれば健康上何ら問題ありません。
育ガン要因となる3つの環境
ガンが成長するにはかなりの年月がかかるのが普通ですが、成長が早い場合もあります。
この、ガンの成長を促す要因が育ガン要因です。
育ガン要因には多くのものがありますが、基本的には次の3つが重要です。
1、低体温
2、低酸素
3、高血糖
これは免疫学の阿保徹先生の説ですが、体温が低く、血液中に酸素が少ない、そして血糖値が高い状態が続いているとガン細胞が増殖しやすいということ。
この説を受けて一部の病院では温熱療法、酸素カプセル、ケトン食などとして治療に応用されています。
活性酸素とタンパク質
抗酸化物質と言うとビタミンCやE、ポリフェノールなどがありますが、それらは外因性(体外から摂り入れる)のもの。
最も重要なのは、体内で作られる抗酸化酵素です。
体内では多種類の抗酸化酵素が働いていて、エネルギーを生み出す過程で必然的に発生する活性酸素を消去しています。
酵素はタンパク質に鉄や亜鉛などが結合しているものなので、タンパク質不足では抗酸化酵素不足になり、活性酸素にも弱くなる。
身体の抗酸化力を高めるためにはまず、抗酸化酵素を活性化することが重要となります。
そのためにはもちろん、材料となるタンパク質やミネラルなどの微量栄養素を十分に摂る必要があるでしょう。
低体温とタンパク質
低体温とは体温が低い状態のこと。
平熱は理想的には37度、低くても36度5分以上は欲しいところですが、今どきは35度台の人がたくさんいます。
平熱が36.5度以下であれば何らかの理由で代謝が低下し、低体温状態になっていると思っていいでしょう。
よく、冷えを取るために温めることが推奨されていますが、それは対処療法であって根本的な解決にはなりません。
普通、いくら温めても冷えや低体温は治らない。
代謝が低いから体温が低くなっているわけですから、根本的な解決は代謝を高めることになります。
タンパク不足になると身体の酵素活性が低下し、熱を生み出せません。
身体のなかの化学変化が不活発になってしまうのです。
冷えや低体温の主な原因はタンパク不足で、実際にタンパク質を十分に摂ることで解消されてきます。
(ミネラル、特に鉄や、ビタミンも重要ですが、一番大事なのはタンパク質)
タンパク不足では体温が下がりやすく、がんが増殖しやすい体内環境を生み出してしまいます。
低酸素とタンパク質
血液中で酸素の運搬を担っているヘモグロビンは鉄とタンパク質の複合体ですから、タンパク不足は貧血を原因になります。
貧血になると酸欠になり、嫌気性解糖をメインとするガン細胞が増殖しやすい環境になるようです。
このような環境は正常細胞がエネルギー不足になってしまうため、さらにガンの増殖を促進します。
また、タンパク不足が慢性化すると腰や背骨まわりの姿勢を保持する筋肉や呼吸に関与する筋肉が弱くなるため、どうしても呼吸が浅くなります。
タンパク不足の人の特徴の一つは姿勢の悪さ、猫背ですが、この状態は酸素不足の大きな要因です。
血液の酸素運搬能力と呼吸能力の両面から、タンパク不足では低酸素を招きやすいと言えるでしょう。
高血糖とタンパク質
低酸素状態では嫌気性解糖が促進されますが、同時に高血糖状態であればガンに大量のエネルギーを与えることになります。
ガン細胞はブドウ糖を主なエネルギー源とすることが多いため、高血糖状態が続くとガンが成長しやすい。
慢性的な低たんぱく状態では脂質やタンパク質の消化吸収能力が低下するため、糖質中心の食生活になってしまいがち。
タンパク不足は鉄不足につながりますが、鉄不足では有酸素代謝が上手く機能しないので、エネルギー効率が下がり、大量の糖を必要とするようになります。
結果、高血糖状態が長時間保たれるので、がんが成長しやすい環境になるのです。
回復期や成長期には高タンパク食を
このように、身体の基礎的な働きやガンの性質を考えると、ガン予防にもタンパク質が重要だと思えます。
活性酸素、低体温、低酸素、高血糖という4つの要素がガンの発生と増殖を促すのであれば、やはり、たんぱく質不足は解消しておいた方が良い。
タンパク質を充実させることで活性酸素除去能力が高まり、細胞に十分な酸素を供給し、体温を高め血行を良くし、慢性的な高血糖状態を防ぐことにつながるからです。
ただし、これはあくまで慢性的にタンパク質が不足している人についての話。
(僕は治療家なので、基本的に成長期や回復期の栄養について考え、書いています)
十分に健康な成人でタンパク質をはじめとした栄養状態が良く、代謝が正常に機能している人であれば大量のタンパク質は必要としないかもしれません。
現状を維持できれば良いわけですから、回復期や成長期ほどの量は要らなくなるでしょう。
それどころか過剰なタンパク質が脂質代謝を妨げる可能性もあるようですから、十分に回復したらタンパク質過剰のデメリットに関する情報も考慮して、体調を見ながら自分にとっての適量を探ると良いと思います。
でも、慢性的な不足状態からの回復期(これは意外と長く続きます)成長期、出産の前後などには積極的なタンパク摂取を心がけることを勧めます。
判断が甘く回復途中で低タンパク食に移行すると、せっかく回復しかけていた体調がガタっと落ちることもあるので要注意なんです。
基礎的な栄養を充実して代謝を高めていくことが、正常な自己免疫力を働かせるためにはまず必要です。
参考文献