ケトン体とは
脳の唯一のエネルギー源は『ブドウ糖』である。
一昔前まで、そう言われてきました。
確かに、脳はブドウ糖をエネルギー源として使います。
でも、ブドウ糖が ” 唯一 ” のエネルギー源だというのは間違い。
ブドウ糖だけでなく『ケトン体』が重要なエネルギーとして使われています。
脳細胞はブドウ糖よりむしろ、ケトン体を好んで使うという説もあります。
僕はそれ、ホントなんじゃないかと思っています。(カンですが)
このケトン体という物質、糖質制限系の食事法でしばしば登場しますよね。
これ、一体どういうものなのでしょうか?
脂質由来のエネルギー『ケトン体』
ケトン体は、ひとことで言うと『脂質から作られるエネルギー源』です。
食事に含まれる脂質や体内に蓄えられた中性脂肪を原料に、肝臓で合成されています。
ケトン体が血液中に放出されると、脳や筋肉に送られてエネルギー源として使われる。
ですから本来、糖質を食べなくても脂質を十分に食べていれば、
脳や筋肉がエネルギー不足に陥ることはありません。
ケトン体を使って問題なく活動できるんですね。
ブドウ糖をエネルギー源とする細胞
実は、ブドウ糖を唯一のエネルギー源とする細胞もあります。
たとえば赤血球。
赤血球はブドウ糖がエネルギー源で、ケトン体を使えません。
一部にそのような細胞があるため、血液中のブドウ糖は一定量に保たれています。
ただし、ブドウ糖は必要に応じて体内で合成できるんですよ。
これを「糖新生」と呼んでいます。
糖新生はタンパク質や脂質から新しくブドウ糖を作り出す働き。
肝臓で行われています。
だから肝臓がしっかり働いている限り、必ずしも糖質を食べなくても大丈夫なんです。
他に、正常細胞ではありませんが ” 癌細胞 ” もブドウ糖しか利用できないようです。
おそらく正常値を大きく越えた高血糖状態では、癌細胞の成長が早くなります。
これは血糖値を頻繁に上げる食生活(つまり糖質中心の食事)で考えられるリスクの一つ。
癌細胞が成長するためのブドウ糖は、、用意しなくていいですよね。
ケトン体が増えるとき
ケトン体は、飢餓状態で急激に増えると言われています。
たぶん断食なんかしても同じでしょうね。
これは体内に蓄えていた脂肪を分解してケトン体を作り、エネルギーに変えている証拠。
人間はケトン体の他に、水、ビタミン、ミネラルがあれば100日くらいは生きられるようです。
体脂肪には、飢餓に備えてエネルギー源を蓄えておく意味があるんですね。
糖質制限や断糖肉食では『脂質代謝を活性化する』、、なんて事がよく言われます。
脂質代謝とは、ケトン体を使うエネルギーシステムのこと。
身体の基本的な仕組みとして、糖がある時は優先して糖を使います。
でも、糖質制限や断糖をすると、糖の代わりに脂質が多く利用されるようになり、脂質代謝が活性化してきます。
おそらく脂質代謝が活性化した状態は、ヒトの基本的な生理状態ではないかと思っています。
なぜかというと、農耕以前のヒトは穀物など糖質中心の食生活をしていなかったから。
必然的にケトン体が主なエネルギー源となり、脂質代謝が活性化していたはず。
ま、遥か昔のことなんで、はっきりとはわかりませんけどね。
でも実感として、脂質代謝が優勢だと心身ともに安定すると感じています。
断食とケトン体
健康法として断食を推奨されることがあります。
実際に、あるていどの効果があるようですね。
効果の理由の一つには、わざと飢餓状態を作ることで脂質代謝が優勢になり、
ブドウ糖ではなくケトン体を使うモードに切り替わるからではないか。
脂質代謝はエネルギー効率が高いため、安定的で、身体への負荷も少ない代謝回路です。
この方が体の回復力は高まるんですね。
でも、良く考えると、この状態は完全な断食をしなくても作り出すことができます。
食事の中から、糖だけ断食すればいいんです。
断糖肉食や厳しめの糖質制限では、他の栄養素を摂りながら糖だけ断食している、、ということもできそうです。
糖質を過剰摂取していると、どうしても『糖代謝』が優勢になりがち。
糖質を控えることで脂質代謝が優勢になり、エネルギー効率が格段に高まります。
日常的に糖質を控えることの価値は、主にその辺にあるようです。