ビタミンC濃度の高い臓器
ビタミンCは水溶性なので、たくさん飲んでもすぐに排泄されてしまうと言われています。
でも実際は、すべて排泄されてしまうわけではなく、全身の身体の細胞に吸収され、蓄えられます。
ただしブドウ糖と競合関係にあるため、血糖値が高いと吸収されにくいようです。
また、どの細胞にもまんべんなく蓄えられているわけではなく、身体の中にはビタミンCの濃度が際立って高い臓器があります。
それは脳、肝臓、副腎、白血球、目の水晶体などですが、エネルギーを大量に消費したり生存に重要な役目を持っている臓器です。
ビタミンCは抗酸化物質
ビタミンCは基本的に抗酸化物質であり、細胞を酸化(=老化)から守っています。
脳などのエネルギーを大量に消費する臓器では常に大量の活性酸素が発生していますが、ビタミンCはそういったところで重要な働きをしている。
他にも免疫を主る白血球では、ウイルスや細菌と戦う武器として活性酸素を大量に使いますが、白血球自身もその活性酸素で傷付きます。
だから白血球は、自分を守るためにビタミンCをたくさん蓄えています。
そもそも細胞内でエネルギーを生み出しているミトコンドリアは酸素を使って大量のエネルギー(ATP)を生み出すところ。
酸素の数パーセントは活性酸素になりますから、ミトコンドリアは常に活性酸素に晒されている。
ビタミンCはこれらの器官に在って、細胞が傷つかないよう酸化から守っているんです。
もちろんそれだけでなく代謝の補酵素や細胞の重要な構成要素として、非常にたくさんの役割を持っているようです。
例えば細胞と細胞、組織と組織とをつなぐコラーゲン繊維はビタミンCなしでは作れませんから、多細胞生物はエネルギー的にも構造的にもビタミンCの恩恵の元にあると言える。
一説に『現代人は慢性的なビタミンC不足状態だ』と言われていますが、実際にビタミンCの日常的な服用は健康増進や病気予防に役立つと思えます。
ただし、ビタミンCから積極的な健康効果を得るためには、血中濃度をある程度高いレベルに維持する必要があるんです。
今日は、ビタミンCを大量摂取するときの、効果的な方法を紹介します。
冒頭にも書いたように、ビタミンCは水溶性です。
腸から吸収されて血液中に溶け込んだビタミンCは、摂取後比較的短時間(4時間ほど)で尿から排泄されてしまいます。
だから効かない、、と言う人もいるのですが、摂り方のちょっとした工夫で、血中濃度を3倍程度に高めることができるようです。
ダイナミックフロー
ビタミンCの摂取で積極的な効果を期待するには、コツがあります。
そのコツとは、少量(1~2g)を頻回摂取して、血中濃度を長時間高めておくというもの。
ビタミンCは腸から吸収された後、比較的短時間(4時間程度)で尿に排泄されてしまいます。
例えば一度に5g、10gと大量に摂取しても、そのほとんどは吸収されず、吸収された分も4時間後には排泄されてしまう。
ビタミンCについては風邪に効く、効かないという論争が長く続いてきましたが、効果を否定する研究では一日に1回しか摂取していないケースばかりだったようです。
例えば、1gのビタミンCを摂取するとその約75%が吸収され、血中濃度は一定の値まで上がりますが、4時間後には元のレベルに戻ってしまう。
この場合のビタミンCの効果は、血中濃度の高まっていた数時間だけでしょう。
しかし、4時間おきに1gのビタミンCを摂り続けると、血中濃度は下がりきらずにある程度高く維持されます。
これを1時間おきに1g摂り続けると、一回だけ摂取した時の3倍の血中濃度を維持できる。
一般に薬の効果は有効成分の血中濃度に比例するので、より高いビタミンCの効果を狙うなら、血中濃度が高まる摂り方をする方が効果的なんです。
経口摂取では一定の濃度以上にはなりませんが、頻回の摂取で血中のビタミンC濃度を満タンに保った状態は『ダイナミックフロー』と呼ばれています。
持続的にビタミンCの血中濃度を高めることにより、細胞への取り込みも最大になり、体内にビタミンCが満タンになった状態をつくる。
するとビタミンC摂取をやめている時間も、今度は蓄えた細胞からビタミンCが血液中に放出され、血中濃度は比較的長時間高い状態に維持される。
特に病気の時、風邪を引いたとき、強いストレスを受けているときなどは、ビタミンCのダイナミックフロー状態にしておく。
そうすると免疫力を最大にでき、早く回復したりダメージを防げると考えられます。
ビタミンCの吸収と排泄 腸管耐容量
ビタミンCを経口摂取した時の吸収率は、60ミリグラムまでならほとんど100%です。
しかし、一度に摂取する量が多くなるとだんだん吸収率が下がり、次のようになります。
60mg 100%
100mg 80~90%
1g 75%
2g 44%
3g 39%
4g 28%
6g 26%
12g 16%
(Ascorbate: The Science of Vitamin Cより)
例えば、一度に12gを飲むと血液中に吸収されるのは1.9gで、残りはそのまま大腸から排泄されることに。(下痢するかも)
つまり一回での大量摂取には限界があるということです。
血中濃度を持続的に高める目的も含め、一回1~2g程度を一日数回に分けて摂るのが効率的でしょう。
ただし腸管からの吸収率には個人差があります。
また、風邪や病気の時などは一時的に高まるようですから、闘病中や、インフルエンザにかかったときなどはもう少し増やせるかもしれません。
ただし、吸収できる限度を超えると下痢しますので、量を減らす必要があります。
ビタミンC合成能力を失ったヒト
人やサルなどほんの一部の動物を除いて、ほとんどの動物はビタミンCを自分の腎臓や肝臓で作ることができます。
それらの動物が合成するビタミンC濃度は、人間の体重に換算すると一日約2g程度。
しかし、ストレスにさらされたり病気になると何十倍にも増えることが実験から確かめられています。
ところが、人類は進化の過程でビタミンC合成能力を失いまいました。(その分脳の発達にエネルギーを回せたらしいです)
そのため必ず食物から摂取する必要がありますが、食材や住環境が劣化し、ストレスが高まり、寿命も延びている現代社会では、食べ物から摂取する量ではとても足りない、、というのがビタミンCの積極的な大量摂取を勧める人たちの考え方。
その時に参考になるのが、今日紹介した『ダイナミックフロー』という状態を作る摂取方法です。
まぁ、少量を頻回摂取すればいいだけですから、簡単ですね。
これを長期的に続けていいものかどうか、僕はまだ答えを持ちませんが、少なくとも風邪を引いたときや強いストレスに晒されているときには使えると思います。
参考文献
「ビタミンCの大量摂取がカゼを防ぎ、がんに効く」生田 哲 著