人類が肉食になったのはいつ頃か?

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ヒトはサルから進化した?

はるか昔、初めて文字を書いたり、

土地を耕して作物を栽培したり、

船に乗って海にこぎ出したりするようになるはるか前に、

私たちの祖先はアフリカで狩猟者、採集者として生きていました。

「ヒトはサルから進化した」という言い方をされることがありますが、

正確には「人はサルと共通の祖先から進化した」と言えます。

総合研究大学院大学の宝来聡教授が、

ミトコンドリアDNAの解析をもとに作成したヒトと類人猿の系統樹があります。

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     ※ 出典「ミトコンドリアのちから」P.354

この系統樹によれば、ヒトと類人猿の共通の祖先から、

まず1300万年前にオラウータンが枝分かれしました。

次に、656万年前にゴリラが、

続いて、487万年前にチンパンジーが枝分かれしました。

これによれば、ヒトはゴリラよりもチンパンジーに近いようですね。

ヒトはいつから肉食か?

約1万年前に農耕や牧畜を始めるまで、

人類はすべて狩猟採集で暮らしていた言われています。

糖質制限系の食事法に関する本の中には、

「人類は700万年前から肉食主体の生活をしていた」と書かれていたりしますが、

実際に積極的な肉食を行うようになったのは、もう少し後のようです。

アウストラロピテクスの姿

約300万年前に生きていた私たちの先祖「アウストラロピテクス」は、

2足歩行をしていたという点で人間的であったものの、

他の身体的特徴はほぼチンパンジーと同じようなものでした。

身体的特徴と捕食行動は関連性が深く、

おそらくアウストラロピテクスの食生活は、

その後の人類の食生活よりはチンパンジーに近いものだったと思われます。

大きく強い顎や歯、長い腸などの身体的特徴は、

大量の食物繊維を消化吸収して栄養源とすることに適しています。

チンパンジーは機会さえあれば他のサルや哺乳類の子供、

そして昆虫などを捕えて食べますが、

ヒトと比べて植物性の餌を消化吸収することに適した構造を持っており、

実際に、数週間から数か月の間、動物性の餌なしで生活することがあるようです。

ヒト 熱心な肉食動物 

一方、私たち人類はより熱心な肉食動物であり、

太古の昔から大型動物を殺して、その肉を食べてきました。

世界中の先住民族の文化に関する記録によれば、

そのほとんどすべてにおいて肉食が食生活の重要な部分を占めています。

どうも霊長類の中で私たちヒト属だけが、熱心な肉食動物であるようなのです。

人類の来た道

さて、300万年前のアウストラロピテクスから現在の人類に至る過程を

「火の賜物」の記載を参考に簡単にたどってみます。

260万年前

最初の変化のシグナルは約260万年前

その時代の地層の中から、

丸い石を意図的に削って鋭くしたナイフのような石器が発見されています。

また、死んだレイヨウから舌を切り取ったり、

動物の足の腱を切って肉をとったりしていたことが、

化石の骨についた傷痕からわかりました。

この新しい行動は非常に効率が良く、

チンパンジーが肉を食べる時のどんな行動よりも技術的に高度です。

ナイフを作ったということは、計画、忍耐、協力、

そして、組織的な行動ができたことを意味しています。

230万年前

それから30万年後、

約230万年前に新しい種「ハビリス」が出現しました。

ハビリスは進化の過程で、類人猿と人間をつなぐ特徴を持っています。

ハビリスはアウストラロピテクスとほぼ同じ背丈で、

長い腕と突き出た顎を持っていました。

よって類人猿とみなされることもありますが、

ナイフを作り、現存する類人猿の2倍の大きさの脳を持っていたため、

ヒト属、つまり人間に分類されることもあります。

要するに人間に至る前の特徴と人間の特徴をあわせもっていたんですね。

190万年~180万年前

そこからさらに数十万年後、190万年~180万年前の間に、

一部のハビリスが進化して「ホモ・エレクトス」が出現しました。

ホモ・エレクトスは、それまでのどの種よりも私たちに似ていたようです。

ハビリスは他の類人猿のように植物を効率よく消化吸収するための身体的特徴、

大きなあごや歯、長い腸などを持ていましたが、

ホモ・エレクトスはハビリスと比べてより小さい顎や歯に変化していました。

今日の私たちと同じような足運びで歩き、走ったと考えられています。

それから100万年以上後のネアンデルタール人を含む彼らのさまざまな子孫は、

皆同等の身長、体格です。

解剖学的な構造が私たちホモ・サピエンスとそっくりですが、

現代人より小さな脳、低い額という特徴から、

ホモ・エレクトスという固有名詞で呼ばれています。

しかし呼び名がどうであれ、彼らが私たち人類の身体的特徴を確立したことは確か。

成長の速度すら、現代人と同じゆっくりとしたものだったようです。

20万年前

この後、さらなる脳の発達があり、

約20万年前に今のヒト=ホモ・サピエンスが現れました。

まとめると、

約300万年前 アウストラロピテクス 類人猿と変わらない身体的特徴を持つ

約230万年前 ハビリス 類人猿と人間の特徴を併せ持つ 道具を使い、積極的に肉食を行った

約190万年前 ホモ・エレクトス 大きな脳、小さい顎や短い腸など、現代人とほぼ同じ身体的特徴を確立した

約 20万年前 ホモサピエンス 私たち人類の出現

人類学では、このように言われています。

肉食と料理で進化した

人類学の説によれば、チンパンジーに似たアウストラロピテクスを、

ナイフを使う脳の大きなハビリスに進化させた主な要因は「肉食」でした。

消化吸収に時間のかかる植物性の食事から肉をより多く食べるようになったことで、

栄養効率が高まり脳が大きくなりました。

そしてもう一つ重要なことに「火の使用による料理」があります。

食物に火を通して料理することで消化吸収効率が格段に高まりました。

消化器官に対する負担が少なくなることで小さな顎、短い腸に変化し、

食物の消化に費やしていたエネルギーを脳に回せるようになったため、

脳が大きく発達したんですね。

脳はエネルギーを大量に消費する器官です。

だから、肉食と料理によって消化吸収効率が高まったことは、

脳の大きさと機能に大きな変化を生みました。

このように、栄養効率の高い肉を積極的に食べるようになったこと、

料理によって消化吸収効率を格段に高めたことで、

私たち人類は今のような姿に進化したんですね。

人類が肉食になった時期

人類学的な流れから見ると、私たちが積極的な肉食動物になったのは、

身体的な特徴の変化が生じた230万年前頃からだと言えそうです。

そして1万年前に農耕を始めるまで、

基本的に狩猟採集生活を世界各地で続けてきたようですね。

といっても現存する人類が生まれ故郷であるアフリカを出たのは、

およそ6~10万年前くらい前のことなんだとか。

地球は10万年周期で氷河期と間氷期を繰り返しているようなので、

そのころに何か大きな気候変動があったのかもしれません。

肉食系の糖質制限は「ヒト本来の食性に合った」食事法だと言われています。

僕もそう思っているのですが、このような人類学的な視点から眺めてみると、

理解が深まると同時に、おもしろさが増すと思うんですよね。

参考文献

「火の賜物」リチャード・ランガム 著

「ミトコンドリアのちから」 瀬名秀明 太田成男 共著