卵のタンパク質は加熱すると約40%消化吸収率がUPする

medamayaki

卵のタンパク質と料理

卵を食べるなら生食か加熱か??

タンパク質の消化効率を重視するなら、加熱したほうが良さそうです。

卵のタンパク質は、料理によって消化吸収率が格段に高まります。

加熱調理した卵のタンパク質は、消化吸収率が91%~94%

それに対して、生卵の消化吸収率は51%~65%と比較的低いです。

これは料理でタンパク質の栄養的な価値が約40%も高まるということ。

加熱されたタンパク質は、生のままよりはるかに消化吸収されやすいようです。

加熱調理の重要性については今までも何度か書いてきましたが、

今回は、卵の消化吸収効率についての印象的な研究を紹介します。

生卵を飲む人々

かつて、生卵が理想的な栄養源であると広く主張された時期がありました。

「卵は決して調理してはならない」と主張する専門家もいたほど。

自然状態の卵は容易に分解され、あらゆる消化器官から素早く吸収されるが、料理された卵はもう一度液化されなければならず、ただでさえ働きすぎの消化器官に無用の負担をかける。

(モリー&ユージン・クリスチャン 1904年) 「火の賜物」P64より

実際に、ボディービルダー達はこの説を受け入れてきました。

マッスル北村さんも飲んでいたようです。

(動画の冒頭で、生卵10個をプロテインと一緒に飲んでます)

マッスル北村~ボディービルダーの食事1~

他にも、映画「ロッキー」で主人公が生卵を飲むシーンはとても有名ですね。

生卵は噛まずに食べられますし、含まれる栄養素も理想的なもの。

約40種類のタンパク質を作るアミノ酸が、

ほぼ人体が必要としている割合で含まれています。

卵のタンパク質は、他の多くの食品のタンパク質より利用効率が高く、

タンパク質においては、牛乳、肉、大豆より高い「栄養的価値」を持っています。

しかし、その栄養が実際にどれくらい消化吸収されるのか、

加熱や調理の仕方によって影響を受けるのかどうか、

最近まではっきりしたことが分からなかったようです。

食べたタンパク質はどうなるか

料理とタンパク質の消化吸収について、参考になる研究を紹介します。

1990年末、ベルギーの胃腸病学者の研究チームは、

飲み込んだタンパク質がどうなるかを追跡調査しました。

炭素、窒素、水素の安定同位元素を大量に含む飼料をニワトリに与えると、

それらの「しるし」が付いた元素が卵の中に入り込みます。

これを追跡することで、食べた後のタンパク質分子の移動を観察しました。

体内で卵がどれだけ消化吸収されたかを調べるには、

小腸終末部まで到達した食物を採取します。

そこに到達するまでに消化されなかったタンパク質は、

その人の新陳代謝の役には立ちません。

大腸に入ると腸内細菌が自分たちのためだけにタンパク質を消化してしまいます。

当初実験は「回腸造瘻術」を受けた患者によって行われましたが、

(※回腸造瘻術:回腸より肛門側にがんが発生した場合などに大腸を経由せずに人工肛門で排便させる手術)

後に、健常者の志願者もこの研究に加わりました。

加熱されたタンパク質は消化吸収されやすい

実験で、回腸造瘻術の患者と健康な志願者のグループはそれぞれ、

生の卵と料理した卵をそれぞれ4個ずつ食べました。

卵4個のタンパク質量は、約25gです。

結果は、どちらのグループも同じ。

料理した卵の場合、

タンパク質の消化率は91%~94%という高い数値。

ところが生卵は、回腸造瘻術の患者の消化率が51%

健康な志願者の消化率は65%という結果になりました。

生卵のタンパク質は35~49%が消化されず、小腸を通過してしまったんです。

それまで料理が消化吸収に与える影響は詳しく調べられていませんでしたが、

「加熱されたタンパク質は、生よりはるかに消化吸収されやすい」

ということが、この研究によって初めて明らかにりました。

加熱調理によるタンパク質の変性

料理は、タンパク質の栄養的価値を約40%も高めていました。

この劇的な変化について、研究を行ったベルギーの科学者たちは、

主な理由は「過熱によって引き起こされたタンパク質の変性にある」と結論づけました。

変性は、タンパク質の結合が弱まって分子構造が崩れたときに生じます。

熱がタンパク質を変性させるのです。

変性したタンパク質は構造が崩れているため、

消化酵素の影響を受けやすく、より多く消化されます。

タンパク質の変性を促す方法

熱は、タンパク質を変性させる要素の一つですが、

他に、酸、乾燥、塩によってもタンパク質は変性し、消化しやすくなります。

人類ははるか昔から、様々な方法でこれらのすべてを利用してきました。

例えば、酸は通常の消化プロセスに欠かせません。

胃からは1日に1~2リットルの胃液が分泌されますが、

胃液はPH2の強酸性です。

体内の消化ではこの酸によって、食べ物のタンパク質を変性させています。

また、酢やレモンジュースなど酸性の食品は、

肉や魚のタンパク質を変性させて消化しやすくします。

しめ鯖やセビチェ(ラテンアメリカで食べられる魚介類のマリネ)などは、

それを利用した料理の例です。

これらの料理は保存性が高まり美味しくなるだけでなく、

消化吸収しやすくなっているはずです。

魚の干物のように塩を加えて乾燥させたものも、タンパク質が変性して消化されやすくなります。

魚の日干しやジャーキーどの乾燥肉が好まれる理由には、

タンパク質変性による消化効率の向上が影響しているのでしょうね。

参考文献

「火の賜物」リチャード・ランガム 著 (NTT出版)

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