名前を付けた鶏を食べることについて

kazaribane

シロさん

わが家では自給用に鶏を飼っています。

去年、ヒナから育て始めた鶏の中に5羽の雄鶏がいて、

その中に『シロさん』という名前の小柄なやつがいました。

こちらにも書きましたが、雄鶏は初めから食べるつもりでした。

鶏を自分で絞めて食べました

成鶏になってみると、やはりときを作ります。

コケコッコー!!

けっこううるさい。

近くに民家もあるので、やはり雄鶏は減らす必要があります。

それに、もう一つ問題がありました。

雄鶏を入れてから、死ぬ雌鶏が出始めたこと。

明確に雄鶏のせいだとは言い切れませんが、

一般的に、雄鶏を入れると雌鶏が傷つくと聞きます。

卵の栄養素自体は有精卵も無精卵も変わりません。

その上、雄鶏の餌代、傷ついたメスが死ぬこと、群れが安定しないこと、

これらの理由から雄鶏を飼わない養鶏家も少なくないようです。

このようなことを聞いていましたし、

去年まで雌鶏だけの飼育環境では1羽も死ななかったので、

ちょくちょく鶏が死ぬようになると、

雄鶏を入れたせいかもしれないと考えてしまいます。

 

名前を付けた鶏を絞める

うちでは「ゴトウもみじ」という品種の鶏を飼っています。

雌鶏はこんな色。

雄鶏はもう少し白っぽい茶色です。(奥の一羽)

torinoiro

 

でも一羽、まっ白の雄鶏がいました。

そいつは身体が小さくて、他の雄鶏からいじめられていた。

妻はその鶏に『シロさん』と名前を付けて、いつも気にしていました。

シロさんいじめられてないかな、

シロさんかわいそうだよ、、って。

シロさんは確かにいつもおどおどして、

ちょっと哀れで、その分愛着を感じていました。

鶏はいずれ食べるつもりなので、名前を付けるのは控えています。

だって、、愛着がわいてしまうと絞めづらいから。

でも、特徴的でちょっとかわいそうだったシロさんに、

妻はうっかり名前を付けた。

そして、僕はそのシロさんを数日前に絞めました。

 

飾り羽根の役割

鶏を自分で絞めたのは今回で3回目、、

5羽いた雄鶏は、2羽になりました。

屠畜は、あまり気持ちのいいものではありません。

絞める時に暴れますし、精神的エネルギーをかなり消耗します。

実は前回、ナタで首を落とそうとして失敗し、苦しませてしまいました。

雄鶏は首に「飾り羽根」が付いています。

こんなの。

kazaribane

(※うちの鶏ではありません)

この飾り羽根、あんがい丈夫でナタの刃を通しませんでした。

まだ不慣れなこともあり「かわいそうだ」という感覚がありますが、

屠畜に手間取ると本当にかわいそうです。

途中でやめるわけにもいかないし、なんとか必死で絞めました。

それともう一つ、前回までの反省点がありました。

血抜きが不十分だったらしく、食べたお肉がなんとなく臭かった。

はっきりいって美味しくない。

猟師さんの話では、しっかり血抜きをするには、

心臓が動いている状態で頸動脈から放血させた方がいいとのこと。

せっかくですから、できるだけ美味しくいただきたいものです。

 

屠畜

僕は鶏を絞める時、まず、厚手の手袋を頭にかぶせます。

鶏は目隠しすると動かなくなる習性があるからです。

目隠しされた鶏は、逆さまにしても暴れたりしません。

この状態なら、冷静に急所を狙うことができます。

一般的に、自家用に鶏を絞める時は、

鶏を大人しくさせる目的で30分くらい逆さ吊りにするようです。

こうして「のぼせ」させて、動きが弱くなったところを絞める。

初めの一羽の時にこれをやってみましたが、次からはやめました。

逆さ吊りにされた鶏は30分間、明らかに恐怖を感じているように見えたから。

しかも、30分後にいざ絞めようとすると、更に暴れました。

それで他に方法はないかと考えて、

鶏は目隠しすると動かなくなるという話を思い出しました。

試しにやってみたら、ほんとうに大人しくなります。

絞める時の、一瞬の苦しみはどうしてもあるでしょう。

ならば逆さに吊ったりせず、目隠ししてすぱっと絞めることにしました。

頸動脈を切れば一瞬で意識を失うでしょう。

ナタでは頸動脈を狙えないため、今回はカッターナイフを使いました。

飾り羽をハサミで切って、首の皮膚をあらわにします。

ザクザクと飾り羽根を切りながら思ったのですが、

雄鶏の飾り羽は「首を守る」ための羽根なんですね。

非常に丈夫で、内側にも細かな羽根が密に生えています。

これで、外敵の攻撃から急所を守っているのでしょう。

飾り羽を刈った後、ナイフで頸動脈まで一気に切りました。

前回まではあまり血が出なかったのですが、(生臭さの原因だったかも)

今回は、動脈血が勢いよく吹き出した。

寒い外気の中、噴き出す血液から湯気が立ち上ります。

もう、手を止めることはできない。

重苦しい気持ちで作業を進めました。

頸動脈にナイフを入れると、当然ですが、鶏は暴れます。

絞める準備として、あらかじめ麻ひもで足を縛り、

翼もバタつかないようにネット状のもので縛っていました。

でも、翼の動きが強かったため、ネットは外れそうになりました。

それを足で抑えつけ、動かないようにします。

こうなったら手加減するほど苦しみます。

ナイフを入れて頸動脈から放血するまで、凡そ2~3秒。

この数秒間、シロさんは痛かったことでしょう。

でも、その後は痛みを感じないはず。

脳が虚血状態になるので、意識はなくなるはず。

そうであってほしい。

実際はどうなのか、、

絞められる鶏になってみなければわかりません。

でも、、シロさんは、その後30秒くらいバタバタと暴れていました。

今までに絞めた鶏もそうでした。

おそらく、命にかかわる侵害刺激に対する「脊椎反射」だと思います。

首をはねた鶏の胴体が走りまわった、という話を聞きますし。

しばらくすると、シロさんは動かなくなりました。

そのまま逆さに吊るして、血抜きをします。

血抜きが済んだら、フタ付バケツに入れたシロさんを持って家に帰りました。

 

羽根をむしり、解体

家に帰るとすぐ、お湯を沸かします。

大きめののバケツに熱いお湯をはり、シロさんの身体をざぶざぶと漬けました。

こうすると羽根が抜けやすくなるんです。

熱湯にくぐらせたシロさんの白い羽を、ブチブチとむしり取りました。

手で取れる羽はすべて、丁寧に抜きます。

それが終わったらコンロの火でうぶ毛を焼きます。

そして、解体。

よく研いだ包丁で、まずは背中に切れ込みを入れました。

丸鶏の解体、はじめは鶏そのものを観察しながら、

部位ごとにばらしていました。

職業柄、解剖学の知識はある程度あります。

鶏であっても筋肉や関節、内臓の違いは見ればだいたいわかる。

でも、やはり「鶏の捌き方」はあるでしょう。

今回は吉田さんの動画を参考にしました。

丸鶏の解体

もちろん、こんなに上手く出来ませんが、、

動画を見ながら捌いたら、今までよりスムーズになりました。

鶏の解体は今回4度目、、少しは慣れてきましたが、

羽根取りから解体が終わるまで、約2時間かかりました。

 

生きている鶏を絞めて、自分で解体してお肉にすること。

これは、なかなかの仕事です。

慣れればもっと手際良くなると思いますが、それがいつになることやら。

普段、スーパーのお肉売り場にパック詰めされている鶏肉、

あるいは専門の業者さんから取り寄せるお肉を何気なく食べています。

飼育や屠畜、精肉など、全てが済んできれいな「商品」になったお肉です。

自分で育て、絞めて、解体することを繰り返してみると、

それがどういうことなのか、かえってわからなくなりました。

 

シロさんの味

さて、晩御飯はシロさんです。

その日の夜、解体したシロさんのモモ肉を照り焼きにして食べました。

ガスコンロの魚焼きグリルで、時間をかけてじっくり焼きます。

分厚くて、中まで火が通るのに時間がかかりましたが、

表面が焦げるくらいしっかり焼いたお肉を家族でたべました。

さぁ、シロさんをたべるよ。

いただきます。

血抜きをシッカリしたせいかもしれません。

それとも、何回か経験して味わう余裕が生まれたのかもしれません。

とにかく、とても美味しいお肉でした。

よく運動した平飼いの鶏、生後7か月経っています。

スーパーの安い鶏肉はブロイラーですが、

ブロイラーは通常、生後45日程度で出荷されるそうです。

もう少し時間をかけて飼育される地鶏なら100日程度でしょうか。

鶏肉は年齢を重ねるほどに、硬くなってしまいます。

シロさんは、大きな雄鶏に追っかけられたりしてよく運動していました。

引き締まったモモ肉は、ずいぶんと赤い色。

遅筋が発達しているのかもしれません。

マグロなどの回遊魚は、赤身の肉ですよね。

あれは持久力系の「遅筋」が主体で、鉄分豊富です。

いつも食べているブロイラーなどと比べて、シロさんのモモ肉は赤い色でした。

しっかりした硬いお肉ですが、とても美味しかった。

 

あかちゃんも満足

1歳3カ月の息子は、ここ数日、なぜかお肉や卵をあまり食べなくなっていましたが、

シロさんモモ肉は、僕から奪って骨ごと美味しそうにかぶりついていました。

僕たちが特別な想いで食べているのが伝わったのか、

あるいは特別美味しく感じたのか、わかりませんけどね。

シロさん、ありがとう。

シロさんは、僕と、妻と、息子の一部になりました。

 

自給養鶏のゆくえ

おととし、自給自足を目指して鶏を飼いはじめました。

現在、卵はうちでは食べきれないほど生むようになって、

余った分はおすそ分けしたり、

鍼灸院と同じビルにある自然食品店で販売したりしています。

考えてみると勝手な話ですが、卵は動かないのでわりと気軽に食べることができます。

でも、自家製のお肉をたべることは、まだまだ大仕事。

なぜか「自給自足」したくて、ちょっと無理して鶏を飼いはじめました。

2年近く続けて、今はもう、必ずしも「自給自足」にこだわっていません。

でも、環境が許すなら、これからも鶏を飼い続けたいと思っています。