妊娠出産と栄養~体質をつくる時期~

ninnsintoeiyou

「生まれ持った体質」をつくる時期

日々の食事がどれほど一生に影響するかは、妊娠出産と栄養について考えるとわかりやすいです。

妊娠前の母親の栄養状態が子供の体質を決定し、一生の健康の基礎を作ることになるから。

この時期こそが、一生の健康を決める重要なポイントとなります。

鍼灸は不妊治療もお得意で、子宮の血流を高めるような施術を頻繁にしていると妊娠しやすくなります。

僕の患者さんでも鍼灸関連の知り合いの中にも「鍼灸の効果で妊娠した」と思える人は少なくからずいる。

でも、効果があるからこそ、それだけに頼るのは危険だと考えています。

なぜかと言えば、それは「妊娠しにくい状態の人」の妊娠を促す行為だから。

ですから、不妊治療を希望する方には必ず栄養面の改善が大切だと強調しています。

これは、病院での不妊治療を受けている人にも同じことが言えます。

妊娠中の栄養と子供の発育

伝統的な生活を守っている先住民族は、文明社会にあるようなガン、糖尿病といった慢性病なく、健康レベルが非常に高いと言われています。

もちろん見てきたわけじゃありませんが、ほぼ間違いない情報のようです。

これは歯科の長尾周格先生から教わったことですが、いくつかの先住民族は「妊娠前の女性に特別な栄養を与える」という文化を持っているそうです。

具体的には、獣や魚の内臓や目玉、魚卵、甲殻類、貝類などの動物性食品です。

だいたい結婚する半年前くらいからこのような「特別な栄養」を摂って、子供を授かる準備をする伝統があるんだとか。

結婚したらいつでも妊娠するチャンスがあるので、その前に赤ちゃんに与えるための栄養を準備する。

よく考えたら至極自然でまっとうなことですが、現代の日本人でこれを考える人がどれだけいるでしょうか?

おそらく、ほとんどの産婦人科でも教えてないと思います。

先住民族たちは生存の知恵として、母体の栄養状態が子供の発育に影響するということを知っているんですね。

実は医師が活用している最新の栄養学でも、先住民族と同じようなことが言われ始めています。

「栄養療法」の医師や専門家が書いた本には、妊娠時に十分な栄養の蓄えがなければ胎児の成長と母体の健康に大きな悪影響があると書かれています。

妊娠・出産のための栄養

栄養学的な視点からみた、妊娠のために特に重要な栄養素には次のようなものがあります。

タンパク質、脂質(特にコレステロール)、鉄、亜鉛、マグネシウム、カルシウムなどのミネラル類、それにビタミンA、B群、C、Eなどです。

もちろん不必要な栄養素などなく、どの栄養素も大切だと思いますが、妊娠・出産という特別な仕事をなしとげるためには、特にこれらの栄養素の必要量が高まるということでしょう。

栄養不足からの回復にはふつう数年かかりますから、妊娠を望む女性は妊娠の何年も前から、これらの栄養素を積極的に摂っておく必要があります。

そうすることで、赤ちゃんがお腹の中で快適に過ごせる環境を整えることができる。

鍼灸はツボの効用や温熱効果を駆使して子宮内の血流を高めることができますから、妊娠しやすい身体の状態作りに寄与します。

でも、栄養的なアプローチを併用すれば、より確実に、良い状態を作ることができるでしょう。

これらの栄養素には、つわりを軽くしたり母乳の出を良くしたりといった効果も期待できると思います。

悪阻はミネラル不足との関係が深く、母乳の出の良し悪しは、産後の環境とともに、お母さんの栄養状態が大きく関係しているからです。

胎児の成長

胎児は、お腹の中で生物進化の過程を再現するような、大きな変化を遂げます。

妊娠のごく初期、6週目には脳の神経細胞の基礎的な部分ができていて、13週目頃には生命活動の根本を支える脳幹、16週目には大脳の神経細胞がほぼ出来上がっている。

この時期はもちろん基礎的な栄養素であるタンパク質、脂質を大量に必要とする他、十分な量のビタミンやミネラルを必要とします。

妊娠中には血液量が40%ほど増えます。

胎盤や胎児の成長のために、多くの栄養が必要とされることは想像しやすいことです。

このときに母体が栄養不足の状態だったら、胎児の発育がわるくなってしまうかもしれない。

これは非常に重要なことなんです。

鉄不足の日本人女性

日本人の女性は特に、鉄不足が多いと言われています。

栄養療法に携わる医師たちの多くは、日本人女性の8割が鉄不足状態にあると指摘しています。

これには一般的な糖質中心の食習慣や、過度なダイエット志向が影響していると思われます。

鉄は血中に酸素を運ぶだけでなく、エネルギー代謝など、あらゆる生体反応に必須のミネラルです。

胎児の神経の形成などにも関わっており、栄養療法を取り入れている精神科の藤川徳美医師も「重度の鉄不足のまま妊娠すれば胎児の脳や神経系に障害が起こるリスクもある」と警告していますね。

自閉症と鉄不足の関係

健康という視点から見て、若い女性は痩せている場合ではありません。

生き物としてはできるだけ栄養を充実させ、子供を産み育てることに備える必要がある時期なんです。

妊娠中の栄養不足がもたらすもの

妊娠中の鉄不足は、胎児の神経の発達に影響があり、自閉症などの原因となっているようです。

また、妊娠初期に鉄不やタンパク質の不足があると、頭蓋骨の形成に影響するとも言われている。

顔面の真ん中部分に「鼻中隔軟骨」という軟骨がありますが、これの発育が不十分だと鼻腔が狭くなってしまい、鼻で呼吸をしにくくなります。

そのため口呼吸(いつも口で呼吸をする)ようになり、扁桃腺が腫れたり、免疫機能に影響が出やすくなる。

これは一生のことですから、けっこう困ったことなんです。

また、鼻中隔軟骨の発育が悪いと、上あごの発達にも影響します。

上あごの幅が狭くなることで、歯並びが悪くなる。

ガタガタの歯、八重歯、出っ歯や受け口になる原因は「硬いものを噛まないから」などとも言われていますが、胎児期の栄養状態が大きく関係しているようです。

これは見た目にも良くありませんし、虫歯にもなりやすいですが、もっと問題なのは、頭蓋骨の形成が不十分だと悪いということでしょう。

鼻腔が狭くなるので酸素の取り入れ、呼吸による脳への適度な刺激も少なくなってしまいます。

また頭蓋骨だけでなく、胸郭や骨盤、その中にある内臓の発育などにも同時に影響しているんじゃないかと僕は思っています。

なぜかというと、頭蓋骨の発育の悪い人は胸郭や骨盤の発育も悪い傾向があることを観察しているからです。

このように、妊娠中に栄養不足があると、頭蓋骨、歯並び、全身的な骨格の形成に悪い影響がある。

これは間違いのないことでしょう。

生まれ持った体質の差は「遺伝的な要因」だと言われることが多いですが、生育初期の「発育の良否」の問題であることも少なくないはず。

生育初期の発育が悪かった場合、それを大人になってからそれを覆すのは困難で、一生それなりの使い方をしていく必要があるでしょう。

逆に言えば、生まれつき歯並びが良く骨格がしっかりしている人は、胎児の頃の栄養状態が良かった可能性が高い。

骨格だけでなく、神経や内臓機能の発達も順調に言っている可能性が高いと思っています。

胎児の栄養状態はもちろん、お母さんの栄養状態次第です。

基本的には、妊娠するまでの、日頃の食生活の結果だと言えます。

鼻中隔軟骨形成不全なんて言うと難しく感じますが、身近な例はブルドック犬の顔。

ブルドックは先天的に鼻中隔軟骨を形成する遺伝子が無い犬種です。

犬だったらかわいいですけどね。

ですから鼻柱がしっかりと発達し、鼻から息をグングン吸えるような状態が、発育の良いことの一つの目安になります。

これは素人でもある程度判断できますね。

先住民の実例

妊娠中の栄養と、歯並びや骨格の発達が関係あると書きました。

どこにそんな証拠が!?と思われるかもしれませんね。

でも、これにはとても参考になる文献があります。

カナダの歯科医ウェストン・プライス博士の著書「食生活と身体の退化」という本です。

プライス博士は虫歯の原因を探ろうと、虫歯のない民族を世界中に訪ねました。

その結果、伝統的な食事を守っている先住民族に虫歯や不正咬合がほとんど見つからなかったそうです。

現代の日本人の虫歯罹患率は90%以上ですが、伝統的な生活を守る先住民族たちは、多くても数%でした。

でもその一方、遺伝的に同じ民族で、虫歯や歯並びの悪さ、慢性病が多く出ている人たちがいた。

その人たちは、白人が持ち込んだ近代的な食事を取り入れた人たちでした。

そして、彼らの次の世代には、不正咬合や頭蓋骨の発達不良が現れたんです。

先住民保留地に住まわされ、白人の食べる市販の食品を口にしているところでは、どこでも虫歯がひどくなっている。虫歯によって本来の美しさは失われ、咀嚼も上手くいかなくなり、その結果、体全体に障害が広がっていく。

人種や皮膚の色にかかわらず、先住民が栄養欠陥食を食べ始めると、生まれてくる世代には一般に、共通した顔と歯弓列の歪みや骨の異常が見られるが、このことは驚くべきことである。近代文明に接触したオーストラリア先住民の子供たちに狭い歯弓列やぎゅう詰めではみ出した(叢生)歯が見られること、彼らの顔が近代的な白人の顔に似ていることに注目してほしい。(食生活と身体の退化P.142-143より引用)

「食生活と身体の退化」には、このことが豊富な写真とともに数多く記されています。

白人が持ち込んだ食事とは

プライス博士が書いている「白人が持ち込んだ近代的な食事」とは、どんな食事だったのでしょうか。

具体的には次のようなものを指していました。

●砂糖

●精白された穀物

●植物油

●加工食品

プライス博士は、これらの食品には「胎児の発育に必要な栄養素」が十分含まれないため、歯や骨格の発育に影響が出たと結論しています。

つまり、日々の食事からとる栄養が一生の健康に大きく影響しているということ。

これから子供を授かりたいと思っている若い人には特に、このことを知っていただきたいと思っています。

参考文献

「食生活と身体の退化」ウェストン・A・プライス 著 (農文協)

「赤ちゃんが欲しい人のための栄養レシピ」(池田書店)

「歯医者が難病になって分かったこと」長尾周格 著 (三五館)