牛乳・乳製品
ここ数回、牛乳や乳製品についてつらつらと書いてきましたが、
今回は牛乳の成分について確認してみます。
牛乳に限った事じゃありませんが、
日常的に使うような食品については、基礎的なことを知っておくといいと思います。
そうすることで、自分で物事を判断しやすくなるから。
牛乳の成分
さて、牛乳の主な成分は以下のようになっています。
水分 87.7%
固形成分 12.3%
つまり、ほとんどが水。
そして、水分以外の固形成分は次のようになっています。
牛乳の固形成分
脂質 3.8%
タンパク質 3.0%
糖質 4.4%
その他 1.1% (ミネラル・アミノ酸・有機酸、核酸など)
牛乳は、いわゆる3大栄養素の他にビタミン・ミネラルなどの微量栄養素もほぼまんべんなく含んでいるため、卵と並んで「完全栄養食」と呼ばれることもあります。
仔牛が育つための栄養が濃縮されているわけですから、それも当然でしょうね。
牛乳に含まれる栄養素の詳細については、こちらのサイトに載っている表がわかりやすかったので、参考にリンクを貼っておきます。
牛乳の脂質
牛乳の脂質は、ほとんどが「トリグリセリド」と呼ばれる脂質です。
トリグリセリドは中性脂肪とも呼ばれていて、バターやクリームの主成分。
人間の体脂肪や、牛肉の脂身の主成分でもあります。
トリグリセリドは、身体を構成している物質のうち主だったものの一つだと言えるでしょう。
3.8%の脂質のうち、トリグリセリドが3.7%を占めています。
残りはリン脂質、糖脂質、ステロール、脂溶性ビタミン(A,D,E,K)カロチノイドなどです。
牛乳のタンパク質
牛乳に含まれるタンパク質3%のうち、2.3%はカゼイン、0.7%がホエイタンパクです。
カゼインは、熱には強いけれど酸度が増すと沈殿する性質を持っているタンパク質。
チーズのタンパク質はほとんどが、このカゼインです。
カゼインは小さな集合体(ミセル)を作って牛乳の中を漂っています。
牛乳が白い色を保っているのは、カゼインの微小なミセルが牛乳中に分散しているから。
発酵したり酸を加えてたりして牛乳が酸性になると、カゼインは沈殿する性質があります。
ヨーグルトやチーズを作る時、この性質を利用してカゼインを凝固させます。
一方、ホエイタンパク質は酸性でも沈殿しません。
ホエイタンパクは、ホエイ(乳清)に含まれるタンパク質の総称です。
ホエイはヨーグルトやチーズを加工する際に浸みでてくる液体ですが、その液体に溶けているのがホエイタンパクです。
牛乳の糖質
牛乳に含まれる糖質4.4%のほとんどが「乳糖」と呼ばれる糖です。
乳糖はニ糖類で、単糖類のブドウ糖とガラクトースから出来ています。
(単糖類、ニ糖類という言葉についてはこちらを参考にして下さい→ 糖質とは何か?)
乳糖は、哺乳動物のミルクにしか含まれない特殊な糖質です。
牛乳の固形成分の中で最も多いのが乳糖で、小腸から分泌される消化酵素によってブドウ糖とガラクトースに分解されます。
しかし、ほとんどの人は大人になると乳糖分解酵素が分泌されなくなり「乳糖不耐」になるようです。
牛乳を飲むとお腹がゴロゴロする人がいるのは、分解・吸収されなった乳糖を腸内細菌が利用して醗酵し、水素ガスなどを発生させるため。
また、乳糖が吸収されずに大腸に達すると大腸での水分吸収を妨げるために水分が残りやすくなって、下痢をしやすくなります。
このような状態は「乳糖不耐症」と呼ばれていますが、実は、大人になった人類の多くが程度の差はありますが、この乳糖不耐症だと言われています。
ミルクに足りない2つの栄養素
ほ乳類の子供は生育の初期、母親のミルクだけで育ちます。
しかしミルクの栄養は、その子にとってビタミンDと鉄が不足しています。
ビタミンDは、太陽に当たることで皮膚のコレステロールから合成されて補給されます。
鉄は、生まれてくるあかちゃんの肝臓に貯蔵されていて、必要に応じて引き出されます。
このように母親のミルクは、その子にとって「条件付きの完全栄養食」なんです。
その条件とは、
母親の胎内にいる間に十分な鉄を受け取ること
生後、日常的に日光を浴びること
この2つ。
これはもちろん、同じ哺乳類である私たち人間にとっても言えることですね。
牛乳を主食にしているアフリカのマサイ族は、定期的に牛の血液を飲むことが知られています。
それは血液から、足りない鉄分を補うための知恵なのでしょう。
参考文献
「人とミルクの1万年」平田 晶弘 著 (岩波ジュニア新書)