飲む点滴??甘酒の糖質
時々「砂糖の代わりに甘酒を使っているんですけどいいですか?」
このような質問を受けます。
甘酒なら砂糖よりマシですよね?
無加糖の甘酒なら使っても大丈夫ですよね?
このような意味のご質問だと思います。
僕も砂糖をやめたはじめの頃、しばらく『砂糖無添加』の甘酒飲んでました。
砂糖は入ってないし、材料は米麹だけだし、糖質には変わりないけど砂糖よりずっと「やさしそう」です。
穏やかに吸収されて、身体への負荷が少ないんじゃないかと思っていました。
でも先日ある人から、甘酒は飲む点滴じゃないんですか??
という質問を受けて、強い違和感を覚えた。
「飲む点滴」という表現は、はじめて聞いたんです。
だれさ、そんなこと言ってるの。
で、早速ググってみると、出てくる出てくる(笑)
甘酒は飲む点滴とも言われ栄養豊富
栄養豊富で本物の点滴に成分が近い
やさしい甘さでゆっくり吸収されるから身体に良い
などなど。
はて、、甘酒ってそこまでいいものかな?
普通に考えると米を麹(カビの一種)で発酵させたものなので、米のデンプンを麹が分解してブドウ糖を作っています。
そう、甘酒に含まれる糖は「ブドウ糖」なんです。
その分、お米のまま食べるよりも急速に吸収されるはず。
つまり、血糖の急上昇をもたらすんじゃないか。
いわゆる「血糖値」とは、血液中のブドウ糖濃度のことですし。
麹がデンプンをブドウ糖に分解するので、その分お米よりも甘く感じるのが甘酒。
麹の作用によって多少は栄養価が増えているかもしれませんし、発酵食品特有のメリットは何かしらありそうです。
でも、健康上の理由から砂糖をやめた人が代わりに使うものとしてはどうなのか?
疑問が強くなってきたので、ちょっと調べてみました。
2種類の甘酒 酒粕と米麹
甘酒には2種類あります。
一つは酒粕を使ったもの。
これは日本酒を作った時に出る搾りカスに水と砂糖を加えて作る甘酒です。
もう一つは、米麹の甘酒。
これは米麹に水を加えて保温し、発酵させて作るものです。
酒粕そのものは甘くないので、砂糖の代わりに使われるのは「米麹タイプ」の甘酒でしょうね。
米麹タイプの甘酒は、けっこう甘いです。
砂糖のような鋭い甘みではなく、もう少し優しい感じの甘み。
でも、砂糖をやめたり糖質を控えたりてる人にとっては「糖の害」「糖の影響」がどの程度あるか気になるところです。
とりあえず手元の「食品別糖質量ハンドブック」で調べたところ、甘酒湯のみ一杯、150mlの糖質量が26.8gでした。
白がゆ茶碗一杯、150gの糖質量が23.5なので、これに近いですね。
甘酒は、発酵させたお米のスープみたいなものだと思います。
砂糖が良くない理由
さて、砂糖断ちするときの事を考えてみます。
優しい甘み、ゆっくりの吸収で「砂糖中毒」から離脱する助けになるなら、
甘酒の使用も役立つかもしれません。
そもそも「砂糖が良くない」という理由はいろいろありますが、
基本的なところは次のようなものでしょう。
食後血糖値を急上昇させる
糖化現象(細胞の老化を促進)
腸内細菌を乱す
味覚を損なう
高い依存性
栄養欠乏をもたらす
(詳しくはこの記事 → 砂糖を使わない9つの理由~わが家の砂糖なし育児~)
糖化や腸内細菌の変化については簡単には確かめられませんが、血糖上昇なら自分の身体で確かめることができます。
血糖値が上がらなければいいかというと、そうとも言いえませんが、食後血糖値の急激な上昇は血管に炎症を起こすと言われています。
やはり、避けた方がいいでしょう。
特に、体調の良くない人や砂糖依存状態の人は、しばらく血糖値を安定的にコントロールする必要があります。
健康上の理由で砂糖をやめなければいけないような人の多くは血糖調整機能が乱れ、疲れてしまっているからです。
甘酒と血糖値
そこで、甘酒を飲んで血糖値を測る実験をしてみました。
まず、近所のスーパーで「米麹タイプ」の甘酒を買ってきて、

裏に書かれているとおりの分量で水を足し、鍋に火をかけて作ります。

それを湯のみ1杯分、150ml飲んで血糖値の推移を見ました。
測る前の空腹時血糖値は、84mg/dl。
健康な人の空腹時血糖値はだいたい、80~100mg/dl程度に維持されています。
そして空腹時の血糖値を測ったあと、温めた甘酒を飲み干しました。
おう、、甘い。
普段甘いもの飲まないので、けっこう強い甘みを感じました。
でも、飲めないほどじゃありません。
その後の血糖値推移は次のようになりました。
空腹時 83mg/dl
30分後 184mg/dl(あれ、そんなに上がるの?)
60分後 118mg/dl
120分後 79mg/dl
初めの30分で101md/dlも上昇しています。
これ、、僕の身体がおかしいのかな。
コーラだったらどうなる?
とりあえず他の甘いドリンクと比べてみようと思い、翌日にコンビニで買ったコーラで同様の実験をしました。
カロリーゼロとかじゃなくて、ちゃんとした普通のコーラです。

量は同じ150ml、味は、、すげー甘かった。
甘酒と比べても、ドギツイ甘さです。
さて、、結果は次の通り。
空腹時 86mg/dl
30分後 92mg/dl
60分後 111mg/dl
120分後 86mg/dl
あれ?こんなもんか・・
コーラ150mlの糖質量は、甘酒より少ない17gです。
上昇幅を知りたかっただけなので、とりあえず2時間まで測りましたが、
コーラ大したことないですね。
普段甘いものや穀物も食べないので、甘酒にびっくりして急上昇したのかと思いましたが、
「急激に吸収されて危険」と言われる異性化糖入りのコーラを飲んでも、
血糖上昇は大したことありませんでした。(量は甘酒150mgより少ないですが)
でも、味覚的には甘酒よりもキツイ感じがしました。(もう飲みたくない)
再び甘酒にチャレンジ
その翌日、一回目の甘酒実験の結果に不信感があったので、
空腹時にもう一度甘酒を飲んでみました。
今度はこんな結果、、
空腹時 92mg/dl
30分後 189mg/dl
60分後 149mg/dl
120分後 51mg/dl(あれれ?そんなに下がるの?)
僕はどうも、低血糖症のようです。
このレベルの糖質負荷で、血糖コントロールが乱れています。
さて、今回も30分で100mg/dl近く上昇しました。
しかも、2時間後の血糖値は51mg/dlまで下がっちゃいました。
この時、ほんの少しくらくらしてたので立派な低血糖状態です。
たぶん、違う人がやれば違った結果が出ると思います。
僕は以前、低血糖症の症状がかなり出てましたが、今でも強い糖質の負荷には耐えられないのかもしれません。
完全に健康な人の場合、空腹時の水準を大幅に下まわることはないらしいです。
ある程度の糖質負荷をかけても140mg程度までの上昇に抑えられ、下がった後も負荷前の空腹時血糖値より下がらないとされています。
ま、、元々大量の糖質食べていたので正常じゃなくても不思議はないのですが。
でも最近、趣味みたいな感じで時々血糖値を測っていて、このような急激な変化は初めてでした。
特に急上昇から一転、急降下して、元の半分近い低血糖になってしまったのは初めてです。
甘酒、、だからですかねぇ?
妻も甘酒にチャレンジ!
甘酒による血糖急上昇、、もしかしたら僕の「血糖調整機能」が壊れているだけかもしれません。
そこで、妻にも協力してもらいました。
妻は2時間も空腹を我慢するのは嫌だと言うので(笑)
寝起きで血糖値を測り、甘酒飲んだあと1時間までの血糖値推移を測りました。
その結果、、妻も150mgの甘酒を飲んだ後30分で72mg/dlの血糖急上昇がありました。
これは僕よりも少ないですが、甘酒が血糖急上昇を招くことは僕以外でもありそうですね。
コーラは味覚が壊れそう
もちろん、あくまで僕と妻の場合であって個人差があると思います。
でも、この体験からすると砂糖をやめて代わりに甘酒っていうのは、、あんまり意味ないかも。
やってみると次次といろんなことを思い付いて、糖質で同量のコーラだったらどうなるか?
甘酒と同じ糖質量の白砂糖を、お湯に溶かして飲んだらどうなか?
さらに実験を続けたくなっちゃいましたが、
立てつづけにやると身体を壊しそう。
すでに今朝は調子が悪かったです(笑)
しばしダメージを回復して、
そのうちまた続きをやりたいと思います。(気が向いたら)
ちなみに、コーラの血糖上昇は大したことありませんでしたが、
味覚的にはすげー甘かった。
あれ、、味覚壊れると思います。
個人的な体感ですが、味覚を壊す作用と歯を壊す作用は、
同じ量なら甘酒よりもコーラの方が強いと感じました。
「飲む点滴」と言うなら味噌汁でしょ
ちなみに、
甘酒は飲む点滴んで栄養豊富
点滴にと同じ栄養が含まれる
このようなことを書かれているサイトがいくつかありましたし、実際にそう思っている人がけっこういるようです。
でも、甘酒の栄養価は特別に高いものじゃないし、もちろん病院で使う点滴の成分とはぜんぜん違います。
点滴って、ベースは生理食塩水(0.9%の食塩水)ですから。
「飲む点滴」のような表現をするんだったら、出汁の効いた味噌汁の方がずっと適切だと思います。
甘酒が「飲む点滴」だと言われるのはおそらく、速やかに血糖値が上昇して一瞬「満たされた感じ」がするからじゃないかな。
それって、砂糖や甘いドリンクがもたらす満足感と同じです。
習慣になれば身体を害してしまうでしょう。
健康にいいと思って、積極的に飲むようなものじゃなさそう。
調味料として砂糖の代わりに使うことについても慎重になった方が良さそうですね。
僕としては、あまりお勧めできないと思いました。
参考文献
『食品別糖質量ハンドブック』 江部 康二 監修