糖質と炭水化物
糖質の摂り過ぎは、健康上いろいろな問題を招きます。
そのことは幸い、多くの方が気付はじめたようです。
でも、そもそも『糖質とは何か?』を明確に理解している人は、案外少ないと思います。
一部のマニアと、栄養学や生理学の専門家じゃない限りそんなこと知りませんよね。
ぼくも、ぜんぜん知りませんでした。
そもそも分かりづらい。
たとえば一般に、糖質と炭水化物はごちゃ混ぜにされています。
低炭水化物ダイエットとか、脂質・タンパク質・炭水化物が三大栄養素だとか、そんな言われ方をされている。
でも、実際に栄養素として機能するのは糖質です。
炭水化物は糖質と食物繊維が合わさったもの。
炭水化物=糖質+食物繊維
食物繊維は体内で消化吸収されないので栄養素としてカウントされません。
(腸内細菌の餌になって栄養素を生み出す仕組みはあるようですね)
だから炭水化物何グラム、、というと、その内訳がわからない。
白米150gに含まれる糖質
糖質制限など「糖質」を意識した食事法を実践するなら、
食品中に含まれるだいたいの「糖質量」を知っておく必要があります。
例えば、
白米茶碗一杯150gに含まれる糖質は、55.1g
さつまいも150gに含まれる糖質は、39.4g
こんな感じです。
炭水化物の量は、どちらも150gですが、その中に含まれる糖質量は食材によってずいぶん違う。
コンニャクも炭水化物ですが、糖質量はゼロです。
また、お米も玄米だったら、150gの糖質量は53.9g
玄米は食物繊維が多い分、糖質が少し少なくなります。
細かいことですが、これを知っておくと便利です。
じつは食物繊維も「多糖類」なので厳密には糖の一種ですが消化吸収されないんですね。
だから、ふだんの食事で糖質を気にする場合、
『糖質とは、炭水化物から食物繊維をひいたもの』
このように考えておけばいいと思います。
いろいろな糖質
さて、そもそも糖質とは何でしょうか?
単に糖質と言うときもあれば、ブドウ糖、果糖、乳糖、オリゴ糖などなど、いろいろな糖の名前を聞いたことがあると思います。
糖質の摂取が食後高血糖を引き起こす、、などと言われる時、主に問題になっているのは「ブドウ糖」です。
血糖値は、血液中のブドウ糖の値を示したものだから。
でも、糖はブドウ糖以外にもいろんなのがある。
他の糖は気をつけなくてもいいんでしょうかね?
僕も曖昧なところがあったので、ちょっと調べてみました。
一度整理しておくと食事に関する情報を理解するのに役立つと思います。
糖質とは何か?
糖質は一般に、次のように分類されています。
①単糖類
②ニ糖類
③オリゴ糖(少糖類)
④多糖類
⑤糖アルコール
⑥合成甘味料
・・・なにやらたくさんあります。
オリゴ糖と多糖類を合わせて「三糖類以上」と表現されることもあります。
順を追って説明します。
糖質の分類
①単糖類
単糖類とは、これ以上分解されない糖のことで、ブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)などがあります。
食べ物に含まれる糖質はこの単糖類まで消化(分解)されて、
小腸粘膜から体内に吸収されます。
②ニ糖類
ニ糖類は、単糖類が2個結合した糖のこと。
ニ糖類には、乳糖(ラクトース)、麦芽糖(マルトース)、ショ糖(スクロース)などがあります。
いわゆる「砂糖」はショ糖です。
ショ糖はブドウ糖と果糖からできていて、ニ糖類に分類されます。
③オリゴ糖
オリゴ糖は、3~10個の単糖が結合したものであり、
少糖類とも呼ばれます。(オリゴ=少ないという意味)
そのほとんどはヒトの酵素で分解されないため、消化吸収されません。
「オリゴ糖なら吸収されないから大丈夫」とか腸内細菌の餌になるので、お腹にやさしいなどと言われています。
④多糖類
多糖類とは、単糖類が11個以上結合したもののこと。
グリコーゲン、セルロース、デキストリン、デンプンなどがあります。
このうち、消化吸収されないセルロースなどは「食物繊維」と呼ばれます。
ということは、、食物繊維も糖の一種なんですね。
⑤糖アルコール
糖アルコールは自然界(植物中)にも存在する甘味料です。
キシリトール、ソルビトール、マンニトール、エリスリトールなどの種類があります。
工業的にはトウモロコシやイモの澱粉を原材料に製造されています。
この中でエリスリトールは「ラカントS」の材料、血糖値を上げないため糖質制限で薦められています。
(※ 糖アルコールは「お酒」のアルコールとは違うものです)
⑥合成甘味料
合成甘味料は自然界には存在せず、科学的に合成された甘味料です。
アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ネオテーム、スクラロース、サッカリン、などがあります。
血糖値を上げない糖質
この中でセルロースなど食物繊維に分類されるものは糖質とは呼ばないことになっているようです。
厳密には、食物繊維も多糖類なので糖のはずですが人体では消化吸収されないため別扱いにされています。
さて、糖質の中でも血糖値を上げないものがあります。
それは食物繊維の他に、
③のオリゴ糖
⑤の中の「エリスリトール」
⑥の人工甘味料
これらの糖は、血糖値を上げません。
⑤の糖アルコールでもエリスリトール以外はブドウ糖の半分程度の血糖上昇作用があります。
ちなみに、エリスリトールは「ラカントS」の成分です。
江部康二先生の著書「糖質制限パーフェクトガイド」には次のように記されおり、エリスリトールなどの糖アルコールは安全であると考えられているようです。
国際食糧農業機関(FAO)および世界保健機関(WHO)は甘味料などの添加物の安全性を公表していますが、これらの糖アルコールは極めて安全性が高いとされ、摂取量に関する規制はありませんし、妊婦が摂取しても大丈夫とされています。
また、合成甘味料については厚労省が一応の安全性を認めているものの、摂取総量の規制があります。
「血糖上昇を招く糖質を控える」という意味で糖質制限を実践する場合、
これらの血糖上昇をきたさない甘味料の使用を推奨、または容認している医師は多いです。
果糖の危険性
糖質の中でも、果糖は血糖値を上げにくい糖です。
GI値は20程度で、
ブドウ糖(GI値100)と比べて血糖値があまり上昇しません。
だから果糖は良い、、とわれることがりますが、注意が必要です。
果糖の血糖上昇は緩やかですが、
中性脂肪に変わりやすいため肥満しやすい
インスリン抵抗性を増大させる
ブドウ糖よりも糖化反応を起こしやすい
このように、さまざまなデメリットがあります。
飲酒しない人が脂肪肝になる場合、果糖が大きく関与しているとも言われます。
くだものは果糖が豊富ですが、
特にドライフルーツは乾燥して濃縮されています。
また蜂蜜は、天然の果糖が非常に多く含まれている甘味料です。
これらは急激な血糖上昇をきたしませんが、なるべく控えた方が良いでしょう。
糖類ってなに?
また、食品成分の表記に「糖類」と書かれている物があります。
これ「糖質」と違うんですよ。まぎらわしいですね。
糖類とは、①の単糖類と、②のニ糖類の総称です。
だから、糖質ゼロと糖類ゼロでは内容がだいぶ異なります。
成分表示が「糖類ゼロ」でも、
デンプンはたくさん入っているかもしれません。
食品中の糖質量を知るには「食品別糖質量ハンドブック」が便利です。
これ一冊あると、食材、料理、市販の製品など、
日常的な食品の糖質量がひと目でわかります。

参考文献
『糖質制限パーフェクトガイド』 江部康二 著
『食品別糖質量ハンドブック』 江部康二 監修
『ハーパー・生化学 29版』 清水孝雄 監訳