糖質制限が上手く行かない人に共通していたこと

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糖質制限で体調が良くならない人の特徴とは?

今年に入ってから、しっかりと糖質制限してる人が頻繁に来院するようになりました。

食事法を万能薬のように考えている人もいますが(僕もいくぶんそう思っていたところがありますが)実例から、糖質制限さえすれば、MEC食さえすれば、断糖肉食さえすれば体調がぜんぶ良くなる、、と思うのは間違いだとわかります。

先日、貧血の人に「断糖すれば貧血なんて治っちゃうよ!」とアドバイスしている人を見かけましたが、、大丈夫かな?

僕は貧血の人の断糖は、少し慎重にやったほうが良いと思っています。

最近の経験から、糖質制限的な食事法を熱心に実践しても体調が良くならない人について、気が付いたことを書きます。

先にまとめると、

●首、肩~背中のコリがひどい

●呼吸が浅い

●胃腸が弱い

●貧血(ほとんど女性)

●鉄、亜鉛、ビタミンB群など代謝に関わる栄養不足

●タンパク不足

●脂質不足

このような問題がある人が厳密な糖質制限をしても体調が良くなりにくいですし、むしろ悪化する人もいるようです。

逆に言えば、これらの問題を解消すれば食事法のメリットをスムーズに享受できる可能性が高いと思う。

それぞれが相互に関係していて、どれを優先して解決する必要があるかは人によりますが、適切に対処すれば解決できる問題です。

鍼灸院をやっているので問題の一部は鍼灸で解決していますが、マッサージや温熱療法、運動などでも対処できると思います。

冷えや血流の悪さはATP不足

わりとしっかり食事法を実践してるのに上手く行かない人には、貧血の女性が多いです。

ただしその大半は病院では問題ないと言われる「隠れ貧血」でした。

隠れ貧血とは、ヘモグロビン値は基準値以内ですが、鉄の蓄え(貯蔵鉄=フェリチン)が少ない人のこと。

隠れ貧血では、冷え、めまい、疲れやすさなど、貧血と同じような症状が出ます。

患者さんのうち、明らかに重度の人は近くの病院で検査してもらっていますが、フェリチン値10代の人はザラにいますし、中には一桁の人もいました。(理想は100以上だと言われています)

貧血にはいろいろなタイプがありますが、多くは鉄欠乏性の貧血です。

全身の細胞に酸素を運ぶ赤血球の「ヘモグロビン」は鉄とタンパク質が材料ですが、鉄不足だとこれを作ることができません。

酸素の供給が少ないと、極端な糖質制限に適応できないと思われます。

それは酸素を必要とする「有酸素代謝」が高まらず、脂質をエネルギー化しにくいからです。

このような貧血の人が「断糖」レベルの糖質制限をすると、エネルギー不足に陥ってしまう可能性があるでしょう。

実際に甘いものや糖質をやめることができない人、糖質をやめても元気が出ない人には、貧血の人が多くいました。

女性に多い理由は、生理や出産で鉄を失うからです。

一般に日本人の女性には貧血が多く、便秘が多く、頭痛や肩こりが多い。

別々の症状のように思えますが、すべて「酸素不足」と関係しています。(=鉄不足ともいえる)

酸素不足では有酸素代謝(酸素を介してエネルギーを作る働きで効率が高い)が十分機能せず、効率の悪い「解糖」が優位になります。

解糖はブドウ糖を浪費するので、甘いものが欲しくなる。

副産物として乳酸が溜まるので、筋肉の疲労がたまりやすいんです。

でも、乳酸はエネルギー源としてリサイクルできます。

だから一時的なら良いのですが、長期間この状態が続くと筋肉に疲労が溜まり、エネルギーが低下し、身体が冷え、血流が悪くなり、腸が動かなくなり、頭痛、首肩の痛み、生理痛など、慢性的に続く不快な症状が起こりやすくなってしまう。

このような状態の人に適切な鍼灸治療をするとコリがほぐれて血流が良くなり、不快な症状が改善し、とても喜ばれますが、、残念ながら一時的な効果です。

これまでアバウトに「冷え」「血流の悪さ」など認識していましたが、それはむしろ結果であり、主な原因は代謝の低さ、酸素不足、ATP(エネルギー)不足だと思うようになりました。

このような問題は糖質を控えて肉などの動物性食品をしっかり食べていると改善しやすいですが、、注意点もあります。

貧血と糖質制限

まず、貧血傾向のある女性は、厳密な糖質制限をする前に貧血や鉄不足、代謝に関わる栄養の不足を治したほうがいい。

その方が絶対楽だと思います。

貧血や鉄不足のまま糖質制限すると、かなり強い糖質欲求と戦うことになりかねません。

鉄は全身の細胞に酸素を運ぶだけでなく、エネルギーを生み出す働きにも直接関わっていますから、鉄不足の状態だと全般に代謝が落ち、エネルギー不足に陥りやすいんです。

一般的に2週間ほどの「断糖」で糖質依存状態から抜けることができると言われていますが、エネルギー不足が解消しなければ糖質欲求はなくならないでしょう。

エネルギーが足りないのですから、それは正常なことです。

ですから貧血や鉄不足の傾向が見られる患者さんには、まず砂糖などの精製糖質を控え、糖質の過食を控えながら「栄養不足の改善」を優先することを勧めています。

やっぱり、その方が安全で楽だから。

僕の妻は3年前に重度の貧血でしたが、この方式でさほど苦しまずに状態が改善しました。

貧血の解消に伴って冷えや疲れやすさが無くなり、今の体調は以前よりずっと良いようです。

今でもイモなどの糖質を多少食べていますが、自然とケト適応(脂質代謝の活性化)が進んできたようで、最近は長時間空腹でも平気になりました。

ケトン値を測っても僕より優秀なレベルで、「断糖」レベルの食事が続いたときでもごく普通に生活しています。

首肩のコリと胃腸の弱さ

中途半端でない厳密な糖質制限には様々なメリットがあるようです。

特に最近、ケトン代謝が優勢になることによる効用が注目されていますね。

僕も非常に関心があって、病気からの回復や健康維持のために大きな可能性を感じています。

でも、首肩にコリが強い人、胃腸の弱い人などは少し注意が必要かもしれません。

鉄不足の女性はたいてい、首肩や肩甲骨の周りに強いコリがあります。

また、コリを伴った「緊張型」の頭痛を患っている人も多い。

そして同時に胃腸の弱さと、脂質とタンパク質の不足があることが多いです。

実は、これらはすべて繋がっています。

経験的にも首肩~背中のコリと胃腸の弱さは相関性が高いと感じています。

これは自律神経の問題。

リラックスした時に優位になる副交感神経は胃腸や内臓の働きを主っていますが、首肩がカチカチに凝ってしまうような緊張状態では胃腸が働かず、消化液の分泌も少なくなり、タンパク質や脂質の消化吸収能力が低下しているはず。

また、肩甲骨周りに強い凝りがあると、普段から呼吸が浅くなってしまうでしょう。

いつも呼吸が浅ければ「酸欠」になり、有酸素代謝がうまく働きません。

有酸素代謝はブドウ糖や脂肪酸、ケトン体などからエネルギーを作り出す効率の高い代謝回路です。

これが十分回らないので、エネルギー不足になる。

そうすると全身的な機能低下、元気が出ない、冷え、凝り、慢性的な痛み、うつなどの精神症状など様々の不快な症状が出ます。

僕は食事と栄養の重要性に気が付いた当初「食事さえしっかりしていれば鍼灸なんていらないんじゃないか?」と半ば本気で考えました。

でも患者さんとかかわるうちに、食事の改善と鍼灸はけっこう相性が良いということが分かってきました。

実際に、食事法をしっかり実践している患者さんの「根深いコリ」を解消していくと、わりと短期間で体調の改善が見られます。

身体が軽くなり、痛みが無くなり(あるいは軽減し)、暖かくなって、元気が出てくる。

このような患者さんの変化を繰り返し経験するうちに、鍼灸の有効性に改めて気が付きました。

一方、糖質過多な食生活を続けている人の治療は、同じことの繰り返しになることが多いんです。

タンパク不足と脂質不足

また、糖質はかなり控えているけど脂質やタンパク質の摂取量が全然足りてない、または消化吸収できてないという人もいます。

このような人には単に食べる量が少ない人と、胃腸が弱くて食べられない人がいます。

首肩のコリと胃腸機能の低下は関係が深いので、胃腸が弱い場合は同時に解消していく必要があります。

そもそも糖質を控えることが良いと思っても、脂質やタンパク質の重要性は曖昧にしか認識していない方も少なからずいます。

だから、あまり食べてない。

世間一般に「油は良くない」「肉は良くない」というイメージが強く浸透しているので無理もないことかもしれませんが、糖質だけ減らして脂質を増やさなければ「単なるエネルギー不足」になってしまう。

身体の基本的なエネルギー源は、糖質と脂質だからです。

また、タンパク不足では胃腸が弱くなり、代謝が高まりません。

特に胃酸の分泌が弱くなるようですが、そうするとさらにタンパク質の消化力が低下してしまいます。

「代謝」とは体内で行われる化学反応全般を指す言葉ですが、それを主に行っているのは「酵素」です。

食べ物の消化吸収、身体を作ったり修復したりする働き、解毒、エネルギー生産、、すべてに酵素が関わっている。

そして、酵素の主な原料はタンパク質。

だからタンパク質不足では基礎代謝が低下し、身体が元気に活発になりにくいのです。

理屈の上でもそうですが、体験的にも、これは間違いない事実だと感じています。

だから年単位で糖質制限していても、脂質・タンパク質が足りていない人は代謝が高まらず、元気が出ない。

ちょっと考えれば当たり前のことですが、当たり前の事を繰り返し確認した一年間でした。

人によっては回復に数年かかることもあります。

というか、食事を変えて体質が変わっていくには何年もかかるのが普通だと思っていいでしょう。

でも、このような要点をふまえ、ほどほどに体を使いながら実践すれば回復が早まると思います。