野菜の必要性
肉食系の糖質制限を始めてから、野菜の必要性について考えてきました。
今のところ結論は、、保留。
無くても生きていけるけど、一切必要ないとも言えないと思っています。
健康維持に関して野菜の必要性は、おそらく食事のスタイルによって変わってくるのではないか。
肉食系糖質制限の実践者には「野菜不要論」を唱える人もいます。
特に「野菜なんていらないよ!」と断言してくる人には違和感を感じる。
僕はいろんな生活スタイルを持つ患者さんの相談に乗っていることもあり、「こう」と決めつけることを避けています。
モンゴル遊牧民は野菜を食べなくても健康
若いころ、モンゴル遊牧民の生活について書かれた本を読みました。
イギリスのジャーナリストが数年間モンゴル遊牧民と生活を共にし、その様子を書きつづったような本でした。
その本には、次のようなことが書いてありました。
モンゴル遊牧民は乳製品と肉とお茶しか食べない
農耕を嫌い、政府が奨励しても農業をしない
野菜をたべない
肉と乳製品ばかりの食生活にも関わらず、非常に健康レベルが高い
氷点下の草原を薄着で一日中馬に乗り続けていられる
非常に体力があり病気をしない
一般に長生きで年齢よりもずっと若く見える
20年近く前に古本屋で見つけて読んだ本で、残念ながら紛失してしまいました。
記憶を頼りに書いているので全く正確ではないかもしれませんが、強く印象に残っています。
伝統的な遊牧生活を営むモンゴルの人たちが、肉と乳製品が主食で野菜を食べない、健康レベルが高い、、これらのことは事実のようです。
モンゴル遊牧民の他にも、アフリカのマサイ族やアラスカのイヌイットなど、野菜など植物性の食品をほとんど食べずに健康を維持している民族がいる。
そのことから考えると、人類にとって野菜がどうしても必要ということはなさそうに思えます。
でもこれ、、私たち日本人にも当てはまるのでしょうか?
米ばかり食べる短命村
最近「日本の長寿村・短命村」という本を読みました。
著者の近藤正ニ氏は、昭和10年ごろから35年以上かけて全国の長寿村・短命村を現地訪問し、食生活など生活習慣の聞き取り調査を行いました。
長寿村の要因は何か、短命村の要因はなにか、現地に滞在して調査したところ、食生活との関連性が高いことがわかってきたそうです。
その結果「秋田など米を大量に食べる地域は短命村が多く老化も早い」ということがわかった。
そして、このような「短命の村」では、野菜をあまり食べない。
農家でも、作るのはお米ばかりで野菜をあまり食べない地域がけっこうあったようです。
そして、魚ばかり食べて野菜を食べない漁村、リンゴやミカンばかりを食べて野菜を食べない農村にも同じ傾向がありました。
つまり短命村には「野菜を食べない」という共通した特徴があった。
この本の結論の一つは『野菜食うべし!』ということです。
でも、僕はこれを読んで「野菜の必要性は穀物の摂取量に比例するのではないか?」と思いました。
漁師でも果物農家でも、この頃は一般に穀物中心の食事だったはずだからです。
野菜と糖質の関係
モンゴル遊牧民は野菜をたべずに健康で、昭和初期の日本人は野菜不足で短命。
(短命村は、脳血管障害や心疾患が多かったようです)
この違いは、穀物中心の食生活から来るのではないか?
僕自身の経験として、玄米菜食していた頃は大量の野菜を食べていました。
無理に食べていたのではなく、おいしいと思っていました。
野菜っておいしいな~、米と野菜があれば生きていけるな~と、半ば本気で思っていました。
(冷え症でガリガリにやせていたんですけどね)
それが、甘いものと穀物をほぼ完全にやめて、イモなどの炭水化物もほとんど食べずお肉を中心に食べる食事、つまり「断糖肉食」を始めたところ、不思議と野菜を欲しいと思わなくなった。
断糖肉食は、モンゴル遊牧民の食生活に似ています。
妻は去年、料理に野菜を多用していたのですが、なんか(言えないけど)余計なもの食わされてるような感じがしてました。
最近は、夫婦そろってそんな感じで、以前と比べると野菜の消費量が劇的に減っています。
でも、体調はとても良い。
野菜食べなくても調子がいいんです。
このような経験からも『野菜の必要性は糖質の摂取量に比例して高まるのではないか?』という仮説を抱いています。
糖の吸収を抑制
野菜の役割の一つに、糖の吸収を抑制することが考えられます。
よく、ダイエット法として「キャベツをたくさん食べてから、ごはんを食べる」みたいなことが言われていますね。
これは、急激な血糖上昇を抑えることになるのである程度は有効だと思います。
白米や白い小麦など、精白された穀物を食べることの問題点はまず「血糖値の急上昇をもたらす」ことにあり、おそらく野菜をたくさん食べることでこの問題を緩和できます。
毎日のことなので、影響は小さくないでしょう。
腸内細菌を整える
もう一つ、野菜の持つメリットとして「腸内細菌を増やす、整える」ということが考えられます。
砂糖や精白された穀物などをたくさん食べていると、腸内細菌が乱れやすい。
カンジタとリーキーガットの関連でも取り上げましたが、
過剰な糖を餌にして腸内で悪玉菌が異常増殖してしまう。
その結果、腸に炎症がおきたり腸内細菌が有害物質を発したりして身体に害があるようです。
野菜は食物繊維が豊富ですが、食物繊維は人の消化酵素では分解されず、大腸に届いて腸内細菌の餌になります。
腸内細菌の状態が良くなるだけでなく、腸内細菌の働きによってエネルギー源の「脂肪酸」も作られると言われています。
人は一定期間なら菜食でも生きていけますし、長期間高度に適応している例もあるようですが、腸内細菌の作りだす脂肪酸をエネルギー源にして生活しているのかもしれません。
結論として
このようなことから、
肉たくさん、米たくさん、野菜なし、これは良くないんじゃないか。
でも、糖質をほとんど摂らない食生活なら、大きな問題はないかもしれません。
ほどほどに炭水化物を食べるなら、ほどほどに野菜を食べる必要性がある。
今は野菜の必要性につて、そのように考えています。
ただし、腸の状態や、菌叢の状態にも左右されるはず。
ほどほどに野菜を食べた方が調子いい人がいる一方で、野菜を一切やめることで体調がよくなる人もいる。
一概にこうと決められないと思っています。
でも、健康な人がおいしいと感じる量の野菜を食べることは特に問題ないでしょうね。
それと、必要性がある場合は野菜を「おいしい」と感じるはず。
健康な身体は、自分に必要なものを欲するようにできているからです。
また、肉中心の食生活ではビタミンCやマグネシウムが不足することがあるので、葉物野菜などは特に必要性になるかも。
緑の野菜にはビタミンCもマグネシウムも豊富に含まれています。
逆に、食べたくないなら食べなくてもいいんじゃないか。
食物繊維の摂り過ぎで便秘になることもありますし、残留農薬、硝酸態窒素、天然に含まれている毒成分など、野菜はメリットばかりではありません。
その意味で、子供に無理に食べさせることなんかも、やめたほうが良いかもしれません。
腸や肝臓機能が未成熟な子供がアクの強い野菜を嫌うには、それなりの理由があると思います。
個人的には、野菜はたくさん食べなくてもいいけど、旬のものは美味しいし、食卓に彩りが出て食事が楽しくなる脇役、、そんなふうに考えています。
参考文献
『日本の長寿村・短命村』 近藤 正ニ 著