『食生活と身体の退化』 栄養と発育の驚くべき相関関係

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食生活と身体の退化

僕は鍼灸師ですが、

日頃の食事が健康に与える影響をとても重視しています。

鍼灸院で患者さんを診るようになってから、

健康に対する食事の重要性が思っていたよりもはるかに大きい、

ある意味、決定的な要素であると思うようになりました。

その直接のきっかけは、この本。

W・A プライス博士の『食生活と身体の退化』でした。

食生活と身体の退化―先住民の伝統食と近代食その身体への驚くべき影響

1938年に出版されたこの本は、

世界14カ国に住む伝統集団や先住民族の健康状態を調査した記録です。

この本の記載によれば伝統的な食生活を守っている先住民族には、

虫歯や歯周病、不正咬合(歯並びやかみ合わせの問題)がほとんどありませんでした。

ところが、西洋文明がもたらした近代的な食事、

精製された穀物、植物油、加工食品、そして砂糖、、

このような食品を日常的に摂取している集団では、

虫歯、歯周病、不正咬合が多く見られた。

さらに、それまで見られなかった肥満や糖尿病などの慢性病が現れました。

『食生活と身体の退化』には、

このような調査結果が豊富な写真とともに載せられています。

 

食事と虫歯、不正咬合

このように、伝統的な食生活を守っている人にはほとんど虫歯がなく、

罹患率は0~数パーセント程度だったようです。

(現代の日本人は、虫歯罹患率95%)

しかし、まったく同じ民族でも、

砂糖

精製された穀物

缶づめなどの加工食品

植物油

これらを日常的に食べている人たちには、

非常に高頻度に、しかも重度の虫歯が発生していた。

さらに特筆すべきは、

近代食を食べている親が生んだ子供たち、

つまり次の世代に、

高頻度の『歯並びや噛み合わせの悪さ』がみられたことです。

 

慢性病や結核

身体の異変は虫歯や歯並びだけではなく、

それまで見られなかった肥満や糖尿病などの慢性病、

結核などの感染症が多く見られるようになりました。

伝統的な食生活を守っている人たちにはこのような現象が見られず、

非常に高い健康を保ち、寿命も長かったとのこと。

『食生活と身体の退化』には多くの写真が載っていて、

解説を読みながら写真を見れば、違いは素人にも一目瞭然だと思います。

 

現代でも同じ問題が

僕は数年前にこの本に出会い、

食事でこんなに違いが出るのか、、と衝撃を受けました。

そして、小さいながらも鍼灸臨床をしていたため、

普通の人よりも「実際にどうか」確認する機会が多くありました。

知識と体験を照らし合わせ、食事の重要性に深く納得したんです。

あたらしい知識を元に自分自身や周囲の人を観察してみると、

残念ながら、非常によく当てはまっている。

戦後「近代的な食事」で育ったちょうど2世代目が僕らの世代です。

プライス博士の調査が本物なら、

日本においても同じようなことが起きていても不思議はありません。

 

受け口と鼻づまり

僕はもともと歯並びが悪くて上下のかみ合わせが逆になった「受け口」です。

もう、初めからそうなので、これは遺伝だと思っていました。

(家族や親戚に受け口はいないのですが)

さらに、僕の鼻柱は曲がっています。

骨格がはっきりしてくる中学生のころに気が付いたのですが、

鼻の軟骨がはっきりと曲がっていて、まっすぐじゃない。

顔のことなので、若い頃はとても気にしていました。

鼻は曲がっているだけじゃなく、通りも悪かった。

子供のころから慢性的な鼻炎で、いつも口呼吸をしていました。

ある時、鼻から息を吸えることに気がついて、

あれ??鼻って息吸えるんだ!!と「発見」した記憶があります。

それは、たしか小学校の3年生ごろでした。

とうことはその頃、日常的に口呼吸していたということ。

そもそもいつも詰まっていたので、鼻から息を吸えませんでした。

なぜこのようなことを書くかと言うと、

これは、顔の真ん中部分のの発育の悪さと関係があるからです。

 

鼻中隔軟骨の発育

その関連性は『食生活と身体の退化』を読んで初めて知りました。

そもそも歯並びや噛み合わせが悪くなるのは、

上あごや、顔の中段ゾーンの発育不良が原因のようです。

「鼻中隔軟骨」という、顔面の真ん中辺りにある軟骨がありますが、

これが十分に発達することで、シッカリとした鼻腔が形成されます。

鼻腔とは、鼻の穴とその奥につながる空洞です。

ここは結構重要な場所で、

外から入ってきた空気を温め、湿らせ、鼻毛などで異物を取り除きます。

もちろん細菌やウイルスから身を守る「免疫機能」にも重要なところ。

そして、嗅覚。

生物としては臭いをかぎわけることはとても重要ですよね。

嗅覚を司る神経は脳にダイレクトにつながっていて、

嗅覚は脳機能や精神状態、自律神経にも大きな影響を与えると言われます。

鼻の通りが良ければこれらの機能が正常に働き、

脳に適切な刺激が伝わるでしょう。

逆に、いつも鼻が詰まっていれば、それが妨げられてしまいます。

 

鼻中隔軟骨の形成と栄養

ところが妊娠中の栄養不足が原因で、

この部分の発育が不十分となることがある。

顔の中段ゾーンが窪んだようになったり、鼻柱が曲がったり、

穴が狭いので空気の通りが悪くなったりします。

また、上あごの骨が発達するために必要な「幅」が確保できず、

歯並びがガタガタになったり、

僕のような「受け口」の原因にもなるようです。

歯並びの悪さは一般的に言われるように、

良く噛まなかったから、、ではないらしい。

『食生活と身体の退化』によれば、

原因は母親の食事内容、つまり栄養状態にあります。

妊娠中を含めた生育期間中の栄養状態の悪さが、

胎児期からの発育不良の原因だと書いてある。

本をご覧いただければわかりますが、

その影響は素人が見てもわかるほどはっきりしたものです。

 

豆乳育児

僕自身の胎児期や乳幼児期の栄養状態は、

母親から聞いてだいたい分かっています。

母は胃腸虚弱だったうえに粗食がいいと信じてました。

だから、明らかに栄養不足だった。

しかも、その当時は早期の断乳を薦められていて、

生後6カ月程度で母乳をやめたようです。

それに加えて豆乳育児。

これは今でも言われているようですが、

「牛乳は良くない」「豆乳の方がいい」

このようなことが当時、育児関係の本に書いてあったそうです。

6か月で断乳したあと、豆乳と、

おかゆや野菜スープなど一般的な離乳食で育てられました。

僕は今でも痩せ形ですが、子供のころから骨格的細かった。

アトピーや喘息、軽度のてんかんの持病を持っていました。

それでもけっこう元気でしたが、お世辞にも発育がいい方ではなかった。

僕自身の身体、体質と、

生育期間の栄養状態は関連が深いと思っています。

これは個人的な経験ですが、

鍼灸臨床で患者さんのお身体に触れる時、

そもそもの発育状態、発育段階での栄養状態、、

このようなことの影響の大きさを常に感じています。

 

身体の退化の原因

プライス博士の報告は決して過去のものではなく、

今現在の、わたしたちの生活にぴったりと当てはまると感じています。

日本人の虫歯罹患率が95%にも上ること

歯並びの悪いひとが多いこと

口呼吸をする人が多いこと

肥満や糖尿病などの慢性病が増えていること

これらは、疑いようのない事実でしょう。

これら日常的に目にする現象と、食生活の関連性は相当に深いと思います。

プライス博士は身体の退化の原因として、次のことを指摘しました。

砂糖

精製された穀物

缶詰などの加工食品

植物油

高い健康状態を保っていた先住民族は、

西洋人がもたらしたこれらの食品を食べるようになってから、

健康状態が悪化していきました。

 

糖質制限との共通点

精白された穀物と砂糖の問題は、糖質制限の考えに通じます。

また、植物油の危険性については、現代の油脂栄養学によっても指摘されていることです。

トランス脂肪酸や植物油の精製過程で発生する有害因子など、

植物油の有害性が専門家によって指摘されています。

また、世界各地の先住民たちは、必ず動物性食品を利用していました。

地域や文化によって比率は異なりますが、

ほぼ100%動物性食品の民族もあり、

そうでなくても可能な限り肉や魚を摂取しようとしていて、

動物性食品をしっかり食べることで健康を維持していることがわかります。

糖質制限系の食事法が推奨する、

糖質を控え、肉や卵などの動物性食品を十分に食べる、

このような食事は、プライス博士が書いていることと一致しています。

特に妊娠前の半年間は、

特別な栄養を摂る習慣のある民族が複数ありました。

その特別な栄養とは、

バター、レバー、動物の内臓、目玉、魚卵、カニ、貝類、など。

妊娠前・妊娠中に、これらの動物性食品を積極的に食べる。

胎児の発育に必要な栄養を確保するという、民族の知恵です。

出産をひかえた若い女性は特にこういった食品を積極的に食べて、

あかちゃんのための十分な栄養を蓄えておくといいでしょう。

 

和食は健康的か?

従来、日本人の一般的な感覚として、

健康的な食事は和食であり、肉や脂を控え、

穀物と野菜中心で、カロリー控えめな食事である、、

このようなイメージが根強くあります。

でも、このような健康食のイメージは修正する必要があると思う。

和食は弥生期以降、日本の気候風土と社会状況に適応した食事ですから、

もちろん全否定するわけではありません。

でも、米に対する執着、肉食の禁忌など、

過去の日本国家が社会を統治する上で必要とされ、

植え付けられてきた思想を今でも引きずっている、、とも言える。

食事は特に、次世代の発育に大きく影響します。

豊かになって衛生状態が改善し、

医療も高度になった現代では多少の『発育不良』はカバーできますが、

本人にとってはやはり、不便で辛さを伴うことがあります。

子供の未来をどうするか。

そういう意味でも僕は、従来の常識を見直していく必要性を感じています。

 

なお、ご紹介した『食生活と身体の退化』は素晴らしい本ですが、

内容がぎっしり詰まっていため、ちょっと読みやすいとは言えません。

以前ご紹介した長尾先生の著書『歯医者が難病になってわかったこと』は、

『食生活と身体の退化』のエッセンスが詰まっています。

手軽に要点を掴みたい方には長尾先生の本がお薦めです。

 

参考文献

『食生活と身体の退化』 W.A プライス 著