『火の賜物』 ヒトは肉と料理で進化した

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肉食動物というより「料理者」

『火の賜物』という本を読みました。

これ、僕的にはここ数年で最高のヒットです。

非常に興味深い本でした。

火の賜物―ヒトは料理で進化した

ヒトは他の類人猿と比べて異なるところが多いです。

体毛がない、二足歩行、大きな脳、小さな消化器、小さな歯や顎、、

ヒトが肉食動物だというと、ネコ科の動物などと比べて歯の鋭さや、

道具を持たない状態での身体能力、戦闘能力の低さを疑問視する意見があります。

槍などの道具を使ったとしても、この弱い身体で肉食動物として生き抜いてきたことは少し不思議です。(正確には肉食傾向の強い雑食動物です)

従来、類人猿からヒトになるまでの変化をもたらした原因は『肉食』だというのが定説でした。

実際、霊長類の中でヒトだけが大型の哺乳類を捕獲し、積極的に肉を食べます。

 

腸 トレードオフ

『腸ー脳 トレードオフ』という考え方があります。

肉から栄養をとることは、植物の繊維を消化することと比べて、消化機能に負担をかけません。

ヒトは肉食をするにつれて食物から多くのエネルギーを、よりラクに得ることができるようになりました。

そして消化の負担が減った分、腸が短くなります。

また、消化吸収のためのエネルギーが減ったことで、脳に回せるエネルギーが増えました。

その変化が、現代のヒトにつながる脳の肥大化をもたらしました。

これが、脳ー腸トレードオフの考え方です。

 

脳を大きくする食事

このような変化をもたらした主な原因は『肉食』である、というのが従来の説です。

しかし、それだけでは説明がつかないことがあります。

ヒトが他の類人猿と比べて顎や歯が小さく弱いことの理由は説明できません。

多くの肉食動物は獲物を切り裂くための強い顎や、消化力の強い胃をもっていますが、ヒトのあごや歯は、類人猿よりもずっと弱く小さいものです。

またヒトは、植物の葉や根、木の実なども食べてきましたが、それらを消化吸収するためにも、この身体は弱すぎるようです。

変化の理由の一つは確かに肉食ですがもう一つ、重要な要素がありました。

それが火の使用、つまり『料理』だということです。

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以下、印象に残ったところを引用します。

生命の長い歴史の中で、ホモ属(ヒト属)の出現を促したのは、火の使用と料理の発明だった。

料理は食物の価値を高め、私達の体、脳、時間の使い方、社会生活を変化させた。

私達を外部エネルギーの消費者に変え、燃料に依存する、自然との新しい関係を持つ生命体が登場した。

300万年前 アウストラロピテクス 脳の大きさは類人猿と同じ、直立歩行する点で人間らしかったものの、特徴のほとんどは類人猿に近い。

230万年前 ハビリス 類人猿と人間をつなぐ特徴を持つ。ナイフを作り、現存する類人猿の2倍の大きさの脳を持っていた。人間に至る前の特徴と、人間的な特徴を併せ持っていた。

190万年前 ホモエレクトス それまでのどの種より、私達に似ていた。現代人より小さな脳、低い額といった特徴はあるが、彼らが今の私達の身体的特徴を確立したのは確か。

20万年前 ホモサピエンス 今のヒト。ホモエレクトスよりも脳が発達している。

人類の起源に関する問いは『アウストラロピテクスからホモエレクトスを発生させた力は何か』ということ。

1950年以降最も支持された人類学の学説によると、そこに働いた唯一の力は『肉食』である。

霊長類の中で私たちだけが熱心な肉食動物であり、大型獣を殺して肉を取るのだ。しかし、それだけではすべての変化を説明できない。

人類学上2つ目の大きな変化、ハビリスをホモエレクトスに進化させた要因は、火の使用、つまり料理によってもたらされた。

動物は生のものだけを食べて生きていけるが、ヒトは生のものだけでは生きていけない。

生食を続ている人の多くは痩せているが、料理したものを食べる人々の間では、ベジタリアンと肉食者に体重の差はない。

デンプン質は、水と一緒に加熱調理することで消化効率が倍になる。

料理はデンプン質のグリセミック指数を常に上げる。

加熱されたタンパク質は生のタンパク質よりはるかに消化されやすい。

変性したタンパク質は消化されやすい。

タンパク質を変性する方法、加熱、酸、塩化ナトリウム、乾燥、、

調理、塩漬け、干し肉なども、タンパク質の消化効率を高める。

食べ物の消化は、やわらかくなればなるほど、早く、完全に消化される。

また、細かくなればなるほど、短時間に、完全に消化される。

ヒトは料理に依存している。

加熱により栄養を壊さないため、あるいは酵素を摂取するという目的で生食が薦められることがあります。

でも、ヒトの進化の歴史を考慮するなら、食材は適切に加熱調理して食べることが望ましいのかもしれません。