生食だけでは健康を保てない ~加熱調理のすすめ~

菜食するなら気を付けてほしいこと

日頃、肉・魚・卵・チーズなど、動物性のものしっかり食べることを薦めています。

でも何らかの事情で、どうしても食べたくない人はいるだろうと思います。

環境問題、動物愛護の考え、宗教上の理由とか、いろいろでしょう。

それは個人の信条ですから、なるべく尊重したいです。

でもね、最低限度、次の2つのことには気をつけてほしい。

一つは、その状態で妊娠・出産・授乳しないこと。(ダンナさん含む)

栄養不足によって、お子さんの発育に問題が出る可能性があります。

もう1つは、加熱調理をすること。

生食を推奨する食事法がありますが、あれは危険だと思うんです。

 

加熱調理のすすめ

菜食・肉食に関わらず、食べ物は基本的に調理して食べた方がいいんです。

食材を生で食べた場合と、加熱した場合では、全体としての栄養の利用効率にかなりの差があります。

その差は個人や食材によって違いますが、倍くらいはあるようです。

 

生食者は痩せている

菜食主義にもいろいろあって、生しか食べない人たちがいるようです。

実践者に合ったことがありますが、ガリガリに痩せていました。

厳密な菜食主義者は痩せている人が多いですが、中には太っている人もいます。

砂糖や炭水化物をたくさん食べていれば、菜食でも太ります。

でももし、炭水化物を加熱調理しなかったらどうなるでしょうか?

たぶん、かなり痩せてしまうと思います。

炭水化物に含まれるデンプンは、水と一緒に加熱することで、

消化吸収できるようになります。

人間を『料理する動物』だということもできます。

あらゆる動物の中で人間だけが火を使い、食材を料理して食べるから。

これは文明的な生活をしている人でも、古代からの生活様式を守っている先住民でもおなじ。

人類共通のことなんです。

 

 

人間も動物、、でも

人間以外の動物は、生のものだけを食べて生きることができます。

人間にも、これが可能か?

一般的には、可能であると思われているかもしれません。

『動物は生のものを食べて生きてる、人間も動物だ、だから人間も生のものを食べて生きていけるはずだ』

このように考えることはできそうですね。

実際、生で食べられているものは多いです。

リンゴ、トマト、牡蠣、魚や動物の肉も鮮度がよければ生食可能です。

くだものやお刺身、美味しいですよね。

でも実際問題、毎日生のものだけを食べて生活している人は少ないです。

それは、ちょっと無理があると感じませんか?

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ギーゼンの生食主義者

栄養学者のコリナン・ケプニックが、ドイツのギーゼンで行った生食者の体重に関する研究があります。

食事の70%~100%を生で食べる513人を対象とした、大規模なアンケート調査です。

研究に協力した人たちが生食をする理由は、健康、予防、長生きするため、自然に生きるため、と様々。

生の食物には、料理していない野菜、時々摂る肉(多くは菜食主義者)コールドプレス製法による油、

そして蜂蜜、ドライフルーツや乾燥肉、乾燥魚などが含まれていました。

 

生食に比例して体重が減少

肥満度を表すのには、BMI(※肥満度をあらわす指標、体重を身長の2乗で割って求める値)が使われました。

彼らのBMIは、生の食物の割合が増えるにつれて下がっていきました。(つまり痩せた)

料理した食べ物から生の食べ物に移行した時の平均的な体重減少は、女性で12キロ、男性で9.9キロ。

純粋な生食主義者の集団のうち1/3が、慢性的なエネルギー欠乏を示す体重でした。

栄養学者たちの結論は、

生の食べ物だけを食べる食事法では、十分なエネルギー供給ができない

というものでした。

 

生殖機能への影響

生食主義者に生じる体重減少の意味を判断するには、それが重要な身体機能を阻害しているかどうか確かめる必要があります。

ギーゼンの調査では、女性が生ものを食べれば食べるほど痩せていき、一部または完全な無月経になりやすいことがわかりました。

完全な生食の女性では、約50%が無月経でした。

更に10%の女性は月経が不規則で、妊娠が見込めない状態にありました。

これは、料理したものを食べる女性よりはるかに高い数字です。

ベジタリアンかどうかに関係なく、料理したものを食べる女性の月経がなくなるのは稀なこと。

しかし、マラソン選手や拒食症患者など、極端なエネルギー不足に陥った女性の卵巣機能は、明らかに低下します。

このような生殖機能の減退は男性にも見られ、一日のうちにセックスについて考える回数が著しく減った、という証言がなされています。

 

生理が止まった患者さん

実は、僕の鍼灸院の患者さんの中にも、このような人が何人もいました。

個人的にベジタリアンや元ベジタリアンの知り合いが多いので、健康相談に乗ることがあります。

女性の生理については通常、男性である僕が知る機会は少ないのですが、

鍼灸師という仕事柄打ち明けられることがあります。

拒食症や、極端な粗食、菜食、生食を、長期間続けている若い女性の生理が止まってしまうのは、

極端な栄養欠乏から身体を守るためです。

月経は血液を失うので、鉄分やタンパク質などを多く失います。

あまりにそれが足りなくなると生命の危機があるため、10代や20代の若さで月経が止まってしまうんですね。

もちろん、その状態では赤ちゃんを授かることは出来ません。

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次世代のため

世の中にはいろいろな食事法があります。

それぞれ『いいですよ!』って言われているので、素人にはその是非を判断することがなかなか難しい。

でも月経や生殖など、子供を産んで次世代に残すための機能が乱れたり、止まってしまうような食事法は間違っていると思います。

少なくとも、若い世代が取り入れるものではないと思うんですよね。

基本的にはいつも言っているように、肉・魚・卵・チーズなどの動物性食品をたっぷり食べていただきたい。

特に若い世代には、それが必要です。

でも何らかの理由でそれができない人は、加熱調理によって、栄養の吸収を高める必要があります。

これは、消化力が弱くてたくさん食べられない人にも言えること。

料理は、人の消化力を助けるために一番有効なの手段なんですよ。

人類はそうやって、厳しい環境を生きぬいてきたんです。

 

参考文献

『火の賜物』リチャード・ランガム 著